アイデンティティ研究で有名なBlock (2007)の「Second language identities」を読みました。

この前も紹介したBlockの別の本を読みました。

  • Block, David. Second language identities. Bloomsbury Publishing, 2009.

この本では、第二言語を学ぶことによってアイデンティティが変わるのか(第二言語を介したアイデンティティが生まれるのか)というテーマで、様々な研究をまとめていました。わかりやすくまとめられていて、かつ、丁寧に1つ1つの文献を読み込んでいて、研究者として尊敬できるなと思いました。

Blockは、移民のように長い間、第二言語に触れている人だと、第二言語で生活していくうちに、第一言語での生活との断絶を感じたりして、第二言語を介したアイデンティティがみられるようになるケースが多いのではとまとめていました。

ただ、日本語話者が日本で英語や中国語を学ぶ場合など、外国語として言語を学ぶ場合は、アイデンティティに影響が及ぶということはほとんど見られないのではないかと彼は言っていました。(ただし、インターネットなどでかなり第二言語に触れている場合だともしかしたらアイデンティティの変化は見られるかもしれないと言っていましたが。)

この本の最後に、social classについてはあまり第二言語学習では触れられていないと彼は言っていて、これが前紹介した本につながるのだな、と納得しました。

ただ、疑問に思ったのは、何をもって「第二言語アイデンティティ(second language identities)」というのか、アイデンティティの変化がみられたとみなすのか、という点です。例えば、海外で日本語を学ぶ学習者が、日本語を学ぶにつれ、日本語に親近感を感じ、日本語が自分のものだと思うようになった場合、それはアイデンティティ関連のことと言えるのでしょうか。