コミュニティ・ランゲージ・ラーニング(CLL:Community Language Learning)の特徴、やり方、メリット、問題点について

コミュニティ・ランゲージ・ラーニング(CLL:Community Language Learning)とは

コミュニティ・ランゲージ・ラーニング(CLL:Community Language Learning)は、チャールズ・カレン(Charles Curran)が提唱した教授法です。

1970年代に言語教育では様々な教授法が提唱されますが、CLLも1970年代から盛んになった教授法の一つです。

カウンセリング・ラーニング(Counseling-learning)ともいいます。

カレン(Curren 1976)によると、カウンセリング・ラーニングというのは教育全般で取り入れられる手法で、この手法が特に言語教育に応用される際に、コミュニティ・ランゲージ・ラーニングという名称になるとのことです。

 

なお、コミュニカティブ・ランゲージ・ティーチング(CLT: Communicative language teaching)と時々混同されますが、まったく別物なのでご注意ください。

 

CLLの特徴

この教授法は、臨床心理学者であるカール・ロジャーズ(Carl Rogers)の教育観に影響を受け、カウンセリングの理論と手法を取り入れているのが特徴です。

教師は「教える」というより、カウンセラー的な役割を担います。(CLLでは、学習者のことを「クライアント」、教師を「カウンセラー」と呼ぶこともあります)

CLLでは、グループでお互いに助け合って、認め合いながら、不安や緊張を感じさせないような環境で学習を進めることで、学習が促進すると考えています。

なので、教師と学習者や、学習者間の信頼関係構築を重視している教授法です。

 

CLLのやり方

CLLもいろいろなやり方がありますが、よく紹介される方法をここでは紹介します。

 

まず、学習者は円形になって座ります。教師は黒子的な役割になり、円には入らず、その外側にいます。

学習者たちが話し合って話し合いのトピックを決め、それに基づき会話をしていきます。

学習者が言いたいことをどういえばいいかわからない場合、教師を呼びます。

学習者は、自分の言いたいことを母語でいい、それを教師が目標言語に訳して耳元ささやくので、学習者は教師の翻訳を繰り返します。

 

最初は、教師の助けが必要になりますが、学習が進むにつれ、教師の手助けがどんどん必要でなくなっていきます。

また、学習者の発話が間違えていた場合も、学習者が訂正を受けるのは、学習者が安心感を得てからになっています。

 

この学習者間の話し合いはすべて録音されています。

話し合いの後、録音データから、教師が学習項目を選び、解説や練習を行います。

 

CLLのメリットと問題点

メリット

CLLのメリットは、温かい雰囲気の中、不安や緊張なく学習者が学べるということにあると思います。

また、学習者が、自発的に文を作り、自分の言いたいことを言えるというのもメリットでしょう。

話し合いの場で意見をいうというのは、現実的な言語使用の練習に近く、相手・状況に合わせたコミュニケーションの練習にもなります。

 

問題点

CLLを実施する場合、教師に高い翻訳通訳能力が必要になり、それをできる教師は限られてくると考えられます。

また、学習者の母語が同じであるか、学習者全員が意志疎通できる媒介語が必要で、それがない場合には実施は難しいでしょう。

参加できる学習者の人数も限りがあり、10人以上のクラスでやるのは難しいと考えられます。

シラバス・教材がないので、教師が事前準備が難しいです。学習者側もシラバス・教材がほしいと感じる人もいると思います。

 

話し合いのトピックも学習者が決めるので、場面設定が限られてしまう可能性があります。

 

ご興味のある方は

CLLについて簡単に紹介しました。

CLLを使っているという人は私の周りにはいませんが、このように温かい雰囲気で、学習者が学びやすい環境を作るというCLLの理念は、今も示唆はあるのではないかと思います。

 

ご興味のある方は他の教授法についてもご覧ください。