コミュニカティブ・アプローチの特徴とその批判について

コミュニカティブ・アプローチとは

コミュニカティブアプローチは言語形式や構造ではなく、意味のあるコミュニケーションを重視した教授法です(森他 2019, p. 147)。

1970年代から、当時影響力のあったオーディオリンガル・メソッドの限界を克服しようと、コミュニケーション能力の上達に重点を置いた教授法がうまれました。

 

これらのコミュニケーション重視の教授法を総称して「コミュニカティブ・アプローチ」と言います。

コミュニカティブ・ランゲージ・ティーチング(Communicative Language Teaching)(CLT)ともいわれます。

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なお、教授法では、ナチュラル・アプローチのように、教授法の中には開発者がはっきりしているものも多いのですが、コミュニカティブ・アプローチは、開発者がだれかははっきりしていません

コミュニケーションを重視した教授法の総称ともいえるので、教室活動のやり方に細かい指示はありません。。

 

コミュニカティブ・アプローチの特徴

① 意味の伝達を重視

コミュニカティブ・アプローチは、「意味」の伝達を重視しています。

言語はよく「形式(form)」と「意味(meaning)」にわけられます。

形式というのは一般に文法・文型・音韻・語彙を指します。意味というのは、これらの音韻・文法・文型・語彙を使って表される内容や話し手の意図のことを指します。

 

コミュニカティブ・アプローチは相手とコミュニケーションをし、メッセージや自分の意図を伝えることを重視します。

正確さよりも流暢さを重視し、誤りの訂正はそれほど重視はしていません。

 

また、言語を学ぶときに、「店で何かを買う」「大学で先生にお願いする」など、文脈(=ある特定の状況)の中で学ぶことを大切にしています。

② インフォメーションギャップ(information gap)・ロールプレイ

教室活動としてよくあるのはインフォメーションギャップ活動やロールプレイです。

インフォメーションギャップというのは、学習者がペアまたはグループになって活動するのですが、お互いが持っている情報に違いがあるので、その情報差を埋めるために意味交渉をするというものです。

例えば、学習者Aと学習者Bそれぞれに地図を渡します。どちらの地図にも、いくつかの店の場所などが示されていますが、示されている店は違います。

学習者Aは、自分の地図に掲載されていない店にどうやっていけばいいか、学習者Bに聞きます。学習者Bの地図にはその店の場所が掲載されているので、学習者Bは学習者Aに道順を教えます。

道順を教える中で(言語を使う中で)、言語を学習できます。

 

ロールプレイもよくある活動です。店員と顧客、先生と学生というように学生に役割を与え、ある場面を設定して会話をするというものです。

実際に言語を使用する状況を想定しながら、コミュニケーションの練習ができます。

③ 学習者中心

コミュニカティブ・アプローチの特徴の一つは、学習者中心であることです。

学習者の創意工夫や主体性を尊重して活動を行う姿勢があり、ニーズに応じて活動を変えたり、学習者が興味の持てるような内容を選んだりもします。

 

コミュニカティブ・アプローチの批判

コミュニカティブ・アプローチは批判もされています。

① 正確さに欠ける

「意味」や流暢さを重視しすぎる場合、正確さ(accuracy)に欠けるとはいわれています。

コミュニカティブ・アプローチは多種多様ですが、いずれにせよ形式にも着目する必要があると言われています。

個人的な印象ですが、日本語教育だと、特に初級クラスの場合はオーディオリンガル・メソッドとコミュニカティブ・アプローチを合わせたようなクラスが多いような気がします。

 

② コミュニケーションが「情報の伝達」に偏っている

コミュニカティブ・アプローチの活動は、インフォメーションギャップ活動など、「情報」の伝達に着目したものが多いです。

ただ、普段の生活で言語を使うということは、ただ情報の伝達だけではなく、態度や価値観、感情なども密接にかかわってくることです(Kramsch 2009)。

例えば、同じ「さくら」ということばを使っていたとしても、実は日本に生まれ育った人とそうでない人だったら、同じ「さくら」ということばを話していても、それに関して別の感情やイメージを持っているかもしれません。相手と自分との間でそもそも前提条件が違っていて、その擦り合わせが必要だったりします。

また、ことばを使うことは自分のアイデンティティにも関係してきます。

コミュニカティブ・アプローチは上記のような情報伝達以外の言語の役割について重視していないものが多いので、もっと取り入れたほうがいいのではという批判はあります(Block 2003, Kramsch 2009)。

 

まとめ

コミュニカティブ・アプローチについてまとめてみました。何かのお役にたてれば幸いです。

他の教授法についても興味のある方は、よろしければ以下の記事もご覧ください。

 

コミュニカティブ・アプローチについてはだいたいどの言語教育・教授法の本でも紹介されていると思いますので、興味のある方はそちらもご覧ください。

学部生向けの日本語教育概論・日本語教授法クラスで使われる教科書のまとめ