有名な応用言語学者のCanagarajahの講演を視聴しました。

スリランカ出身で今はペンシルバニア州立大学にいるCanagarajahの講演をみました。Canagarajahはworld Englishes(国際共通語としての英語)などで有名だと思います。移民の言語使用などの研究もしているみたいです。

今回視聴したのは2013年5月31日のニューヨーク市立大学バルーク校でのThe 13th Annual Symposium on Communication and Communication-Intensive Instructionというシンポジウムでの講演です。

この講演では自分の経験や、移民に対するインタビューの結果も交えながら、主にビジネスの場面にコミュニケーション(特に英語)に対する2つの立場について述べていました。

1つはネオリベラリズム的な考え方で、共通言語をみんなが話すほうが効率も良いと考えます。この考え方だと、グローバルで通用する人材(フレキシブルに動ける人材)になるためには、規格化した人間(ポートフォリオ・ピープルと呼んでいました)になる必要があます。フレキシブルな人が規格化しているという一見矛盾した形になるそうです。

また、この見方に立つと、コミュニケーションというのは与えられたスクリプト通りにやればいいのだ、ということになります。電話サービスに係る人だと、電話サービスのマニュアル通りに動ければいいということになります。
共通言語といって真っ先に出てくるのは英語で、ポートフォリオ・ピープルにとって、グローバルな英語は必要な不可欠なものになってきます。

もちろん皆それを自覚しているからか、世界中で英語熱が高く、英語が商品化しているといっています。「ケンブリッジ英語」「イギリス英語」「BBC英語」「アメリカ英語」など様々な「英語」が様々な世界中で商品のように出回っている、ということだそうです。このような状況から英語は「リンガ・フランカ(共通語)」というより、「リンガ・フランチャイズ」だと皮肉る人もいるようです。それに伴い、言語テストも、英語だとIELTSやTOFELのように規格化されているといっています。

もう1つの立場は、それとは逆で、英語だけだと不十分で、多言語主義を主張する立場です。

この立場は、英語といっても様々な英語があることをまず指摘します。「英語」とはいったい何かというところにまず疑問を投げかけるみたいです。

それだけでなくこの立場は、実際の現状にも目を向けます。例えば、移民の人たちは同じ地域の人が似たような職業に就くことがおおく、複数言語を使って助け合いながら仕事をしていることが多いといっていました。また、同僚だけでなく、顧客も複数言語を話したりするので、多言語を話すことがビジネスの上でもプラスになることが多々あるといっています。

また、彼らの言語使用は、あるときは英語を使い、ある時は別の言語を使うといったように、きっちり分けているわけではなく、同じ会話の中でいろいろな言語を混ぜながら話すので「トランスリンガル(translingual)」だと言っていました。trans-は「超える」という意味があるので、フレキシブルに言語の境界を超えて話しているという意味だと思います。

また、この立場では正確な文法で話すというより、相手に応じてゆっくり話したり、辛抱強く待ったり、わからないときにどうするかのストラテジーを持っていることも大切になってくるといっていました。

Canagarajahはどちらの立場がいい悪いではなく、たぶんどちらも一理ありなのではと言っていました。

最近言語教育でもtranslingual practiceといって、複数の言語を同時に使う教育が注目を浴びています。そういう系統(?)の論文を読んでいると「monolingualism」(単一言語主義)を、否定的に捉えているような印象を受けることが多いので、Canagarajahがどちらも一理あり(「both are good」のような感じで言ってたと思います)と言っていたのは印象的でした。

 

Canagarajahはこんな本も出版しています。

  • Canagarajah, Suresh. Translingual practice: Global Englishes and cosmopolitan relations. Routledge, 2012.



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