言語研究に当たっての研究手法に関するCameron et al (1993)の論文を読みました。

研究する時に自分がどういう立場か考えるのも必要かと思います。ということで、言語研究に当たっての研究手法(主に研究者と研究される側の関係)に関する以下の論文を読みました。筆頭著者のDeborah Cameronはこのブログの一番最初の記事で紹介した学者です。著者の中には有名な応用言語学者のBen Ramptonも含まれていました。

  • Cameron, Deborah, et al. 1993. Ethics, Advocacy and Empowerment: Issues of Method in Researching Language. Language and Communication 13(2):81-94.

この論文では研究者と研究対象者(研究される側)の関係には3つの枠組みがあるといっています。

①倫理的(Ethics)

  • 研究対象者について研究すること(research on social subjects)。
  • この場合は研究される側のプライバシーを守ったり、倫理面での一定のルールを守って研究をすることになります。

②アドボカシー(Avocacy)

  • 研究対象者について研究対象者のために研究すること(research on and for social subjects)
  • ある研究対象者を助けるために、倫理的基準を守って研究するにとどまらず、政策提言・権利擁護を目的に研究をすることもあり、それがアドボカシー研究だと言っています。

③エンパワーメント(Empowerment)(research, on, for and with social subjects)

  • 研究対象者について研究対象者のために研究対象者とともに研究すること。
  • 研究対象者のために研究をしますが、研究対象者の懸案を理解し、知識を共有し、研究対象者と交流し対話というプロセスを経ます。この論文では主にこの3つ目を取り扱っていました。

特に「客観性」をもとめる実証主義(positivism)による研究だけが研究じゃないと強調していました。

「empowerment」という、研究対象者が「力をつける」という意味の言葉は、「弱い者を助ける」といった意味モダニストな響きがして、McNamara (2012)のいうポスト構造主義を使うモダニスト的立場に当てはまるのかなとパッと読んだ感じでは思ってしまいますが、どうなんでしょうね?

 

Deborah Cameronはこんな本も出版しています。

  • Block, David, and Deborah Cameron, eds. Globalization and language teaching. Routledge, 2002.