最近よく聞くTranslanguagingについて調べてみました。

Translanguagingとは

最近、多言語話者の言語使用についての論文で「translanguaging」という言葉を聞きます。ということで、これについて少し調べてみました。

もともとはtrawsieithuというCen Williams (1994)が作ったウェールズ語の言葉で、Baker (2001)が英語に翻訳したそうです。

Translanguagingというのは要するに同一の会話内でフレキシブルに複数の言葉を使うということを指します。

ただ、二言語併用を指すコードスイッチングという用語とはどう違うのかなどという疑問が出てきます。

 

そこで、トランスランゲージング研究の第一人者であるOfelia GarcíaとLi Weiの『Translanguaging: Language, Bilingualism and Education (Palgrave Pivot)』(2014)の1章をもとに、違いを説明します。

 

バイリンガリズム・相互依存モデル・トランスランゲージングの違い

トランスランゲージングの特徴は、今までと言語に対する考え方が違うということです。

今までの言語に対する考え方をまとめると、以下の図のようになります(Garcia and Li 2014, p.14をもとに作成)。

下記の図のLというのは「言語体系」(「日本語」「英語」「中国語」などのいわゆる「言語」のことです)、F1というのは「言語特徴」(各言語内の語彙のことです)のことです。

 

 

バイリンガリズム

バイリンガリズムの言語に対する考え方は上記のようなものです。L1とL2が別の枠で囲まれていることからもわかるとおり、第一言語と第二言語が別個のものとして存在しています。

 

また、各言語の中に、「F1」という語彙が含まれています。

例えば、「英語」と「日本語」という言語があるのであれば、その中に英語なら「cherry blossoms」「English」「table」などの語彙、日本語なら「さくら」「日本語」「テーブル」などの語彙が含まれているという考えです。

 

二つの言語が一つ一つ独立しているということがこのモデルの前提になります。

コードスイッチング(二言語併用)というのも、このモデルに基づくものです。コードスイッチングというのは、あくまで別個の言語が混ざり合っているという前提のもとに考えられた概念です。

 

相互依存モデル

次にある考え方は、カミンズという有名なカナダの言語学者の提示したモデルです。

このモデルでは、第一言語と第二言語は関係し合っているというものです。根底にはcommon underlying proficiency(共通する基礎能力)というものがあって、第一言語の能力は第二言語にも転移し、その逆もしかりというものです。

 

彼のモデルは継承語教育というディアスポラ・移民の子供の教育などにもかなり影響を与えました。興味のある方は以下をご覧ください。

Cumminsの相互依存モデル、BICSとCALPについて

 

Translanguaging

さて、本題のTranslanguagingですが、それは上記のような考え方です。「L1」や「L2」という言語体系がなくなっているのにお気づきでしょうか。

Translanguagingの考え方では、個別の言語があるのではなく、すべての言語リソースが一つのシステムとして存在しているということを指します。

「さくら」「cherry blossom」「英語」「English」「table」「テーブル」も個人の中では一つの言語リソースとして存在しているという考え方です。

要するにtranslanguagingというのは、1つ1つの言語が独立してあるというよりは、自分の様々な言語リソースの中から言葉を使うということを指します。

 

興味のある方は

トランスランゲージングについて興味のある方は以下の本を読むと理解が深まるのではと思います。

  • García, O and Li, W. (2014) Translanguaging: Language, Bilingualism and Education. Palgrave

特にGaríaはTranslanguaging研究の第一人者なので、彼女の著作にあたるといいかと思います。

 

また、トランスランゲージングは批判もされています。それについて興味のある方は以下の記事などもご覧ください(備忘録なので読みづらいと思いますが…。申し訳ありません)。