選択機能体系言語学(SFL)のハリデーの言語教育におけるコンテクストに関する論文(1991/2007)を読み直しました。

選択機能体系言語学(SFL)について何回かこのブログでも書きましたが(詳しくはこちら)、選択機能体系言語学(SFL)の第一人者のハリデーの言語教育におけるコンテクストについての論文を読み直しました。

  • Halliday, M. A. K. (1991/2007). “The Notion of ‘context’ in Language Education.” In Language and Education (Volume 9 in the Collected Works of M.A.K. Halliday), ed. Jonathan J. Webster. London; New York: Continuum (Original work published 1991), 269–90.

言語のクラスだと「I am a student」とか「This is a pen」とか、あまり文脈がなしに文法構造を中心に学ぶことがちょっと前までは主流でしたが(最近はだいぶ変わっているようですが)、ハリデーは、言語を教えるときにはどの文脈で使うのかというコンテクスト(文脈・状況・場面)が大切だと言っていました。(SFLにおけるコンテクストの考え方について詳しくはこちら)。

ハリデーの考え方を汲んで言語教育で生まれたのがsituational approachで、教科書が文法項目の順番ではなく、「郵便局」「買い物」など場面に分けて構成されているのがその特徴です。日本語だと、situational functional Japaneseという教科書がsituational approachを採用しています(使っているところは少ないかもしれませんが・・・)。

  • Tsukuba Language Group (1991). Situational functional Japanese:Notes and drills, Vol. 1 Bojinsha, Tokyo.

ただ、ハリデーは状況コンテクスト(context of situation)というのは場面(setting)という物質的空間を指すのではなく、そこで何が起こっているのか、だれが参加しているのか、どこで行われているのかという社会プロセスに注目する概念だといっています。(p.277-278)

そして、言語学習というのは、言語を使われる状況コンテクストに結び付け、また言語を通してどういう状況コンテクストなのか解釈する力を養うことだと言っていました。(p.289-290)

つまり、「お会計お願いします」という言葉を、動物園や学校などではなく、レストラン等の適切な場面に結びつける力、そして「お会計お願いします」と聞いたら、「レストランで支払っているんだな」など、今どういう状況なのか解釈する力を持つことということだと思います。

さらに、その状況コンテクストで使われる言葉のリソースを増やすことも必要だといっていました。上記の例だと、「お会計お願いします」だけでなくて、「お愛想」とか「勘定」などの語彙や「よろしいでしょうか」「すみませんが・・」など文法等、レストランで使われる言葉・文法を増やしていくということだと思います。

そして、一つ一つの特殊状況ではなくて、レストランで食事するというものはどういうことなのかという一つ一つの状況の背後にある文化を理解・解釈する力を養うことも必要といっていました。

(ちなみにこの「文化」は上に挙げた「レストランでの食事文化」等、ある場面の背後にある文化を意味するそうで、日本文化等の国や民族の文化に限定されるものではないそうです(勿論それが含まれることもあるそうですが))。(p.284)