言語人類学者のSilverstein (1976)の指標(index)に関する論文を読了。1976年にもうこんな議論がされていたんですね。

Indexとは

下記の本の中のSilversteinのShifters, Linguistic Categories, and Cultural Descriptionを読みました。

  • Silverstein, Michael. “Shifters, linguistic categories, and cultural description.” Meaning in anthropology 1 (1976): 1-55.

Sliversteinも、コンテクスト(文脈・背景・状況)が言語を考える上で必要だと言っています。

Ochsも言っていましたが、「ここ」や「あそこ」と言った言葉は、コンテクストがないと、具体的にどこを指しているのかわかりません。

Silversteinはこのような「ここ」「あそこ」「彼」「明日」などのコンテクストなしには分からない言葉のことを「index(指標)」や「shifter」と読んでいます。shifterというのはshift(移動)から来ていて、コンテクストごとに指し示すものが変わるからという理由だそうです。例えば、同じ「ここ」という言葉でも、文脈ごとに「教室」だったり「部屋」だったり「私の近く」だったりいろいろ変化します。

 

2つのIndex

また、おもしろいなと思ったのは、彼がこのindexを2つに分けていたことです。

1つは上記のreferential index(指示的指標)です。これは、コンテクストなしにはわからないけれど、コンテクストが分かれば、referential meaning(指示的意味)、要するに具体的なもの・場所・人などを指し示すということです。

これとは別にnon-referential index(非指示的指標)というのを挙げていて、これは別に具体的な意味を指すものではないけれども、これによって社会的関係などコンテクストの構造がわかると言っています。

例えば「楽しいわ」とか「楽しいの」とか「わ」や「の」を文末につけると「女性」という社会的意味が生まれることが多いですが、べつに「わ」や「の」は何か具体的な意味を指すわけではありません。

 

パースの記号分類との関係

またパース(Peirce)(1932)の記号分析で記号をicon、symbol、indexの3つの種類をわけています。

パース(Peirce)の記号の種類:icon(アイコン)、symbol(シンボル)、index(インデックス)

↑詳しくはこちらをご覧ください。

 

Silversteinはreferential indexは、パースのいうsymbolにあたり、non-referential indexはパースのいうindexにあたるといっています。

また、Silversteinのいう「index・shifter」はicon以外の2つに関係するといっています。

 

まとめ

ちょっと前から読もうと思っていたので、やっと読めてよかったです。

最近になってようやくindexicalityについてちょっとずつ分かってきた(と自分では思っている)私ですが、今回1976年にはもう既にこういう議論がされていたことを知れて、おもしろかったです。