テレルとクラッシェンのナチュラルアプローチ(Natural Approach)とその批判について

ナチュラルアプローチとは

ナチュラルアプローチはTracy TerrellStephen Krashenが開発したものです。

 

  • Stephen D. Krashen, Tracy D. Terrell (1996) Natural Approach, Pearson Japan

これはこの前紹介した、クラッシェンの5つの仮説に基づくもので、以下のような特徴があります。

 

無理やり話させない

このナチュラルアプローチは、幼児の第一言語習得のプロセスをもとに開発されています。

幼児はまず「聴く」ということをするので、ナチュラルアプローチでも無理に話させようとはせず、最初は数日~1週間程度「listening comprehension period」という聴解に専念させる期間をおいています。

 

教師は学習者にプレッシャーを与えず、学習者の不安をできるだけ少なくすることが求められます。

 

コミュニケーションの場面の大切さ

ナチュラルアプローチではコミュニケーションを重視していて、文法などを明示的に習うのでなく、コミュニケーションの現場でのやり取りを通して、言語を習得することを目的にしています。

 

ただ、教師側の与えるインプットについては工夫が必要で、学習者が既に習得した言語レベルを「i」とすると、それよりも少し高いレベル「+1」のインプットを与える必要があるといっています。

 

自然に段階を踏んで習得

発話は、学習者が話したくなってから徐々に取り入れていきます。

 

最初は「はい/いいえ」で答えられるような単純な質問からはじめ、それから、単語レベルの回答、複数の単語の回答、短い文が発話できるようになるなど、自然な段階を踏んで習得していくことを試みます。

 

また、文法の正確さについては寛容な姿勢をとっており、文法の訂正は重視していません。

 

Natural Approachへの批判

この前のクラッシェンの5つの仮説の記事でも書きましたが、カナダのイマージョンプログラムなどの結果から、理解可能なインプットを聞き続けていても、文法的間違いがいつまでも修正されずに化石化(fossilization)したり、聞き取り能力は伸びても、産出能力が低かったりなどという問題も表出してしているようです。

 

ただ、従来の文型学習と違うアプローチを提示し、コミュニケーションや情意面に配慮したという点では現在の言語教育にも示唆があるアプローチだと思います。