ダイグロシア(diglossia)とは何か

ダイグロシア(diglossia)とは

ダイグロシアは、Ferguson(1959)が提唱した概念です。

ダイグロシアとは、2つの言語(または同じ言語の2つの変種)が、1つの社会で同時に使われている状況のことを言います。そのそれぞれの言語または変種の役割や地位は違います。

 

ちなみにFerguson(1959)は、同じ言語の2つの変種について述べていました。

ただ、のちにFishmanなどによって、同じ言語の2つの変種のみでなく、1つの社会の中の2つの異なる言語の同時使用も含められるようになり、その拡大された定義が一般的に使われています。

 

ダイグロシアの例

アラビア語圏における、標準アラビア語(フスハー)と口語のアラビア語(アーンミーヤ)の関係がダイグロシアの例としてよくあげられます。

 

アラビア語圏では、新聞やニュース、書籍などの大半は標準アラビア語(フスハー)が使われています。

 

一方、普段の生活では口語アラビア語(アーンミーヤ)を使っています。口語アラビア語は地域によって違い、例えばモロッコの口語アラビア語と、エジプトの口語アラビア語だと意思疎通が難しいこともあります。

 

つまり、標準アラビア語(フスハー)と口語のアラビア語(アーンミーヤ)は使われる場面が分かれており、重複する場面がないわけではないですが、住み分けがなされていると考えられます。

 

このように、互いに機能・地位の別の2つの言語(言語変種)が一つの社会に同時に存在することをダイグロシアといいます。

 

その他のダイグロシアの例

Ferguson(1959)では、他のダイグロシアの例として、以下のようなものをあげています。

  • スイスにおける、(1) 標準ドイツ語と (2) スイスドイツ語
  • ハイチにおける、(1) フランス語と (2) ハイチクレオール
  • ギリシャにおける、(1) カサレヴサ(文語)と (2) ディモティキ(口語の標準語)
    (*なお、Fergusonの論文が書かれたのは1959年で、ディモティキが1970年代に公用語化される前です。)

Fergusonのあげた例は、同じ言語の中の変種を前提にしていましたが、2つの言語間の例としては以下のようなものがあげられます。

  • フィリピンにおける、(1) 英語と(2) フィリピノ語
  • マレーシアにおける、(1) 英語と(2) マレー語

 

H変種とL変種

Ferguson(1959)は、H変種(high variety、”H”)とL変種(low variety, “L”)という2種類に分けています。

H変種:社会的に地位が高く、主に公的な場で用いられる。また公的な教育を通して習得されることが多い。

L変種:社会的に地位が低く、主に家庭で使用される。子どもが自然に習得することが多い。

上記の例だと、H変種は、標準アラビア語、標準ドイツ語、フランス語、カサレヴサになります。

L変種は、口語アラビア語、スイスドイツ語、ハイチクレオール、ディモティキです。

 

まとめ

ダイグロシアについて簡単にですがまとめました。

この用語自体は批判もありますが、社会の中の言語(または言語変種)の同時使用(そしてその上下関係)というのは幅広く見受けられる現象であることから、広く使われるようになっています。