「さっぱり」と「あっさり」の違いについて

この記事では、「さっぱり」「あっさり」の違いについて説明します。

 

さっぱり・あっさりの共通点

まず、「さっぱり」と「あっさり」の共通点を見ていきます。

どちらも、以下の場面で頻出します。

  • 食べ物や飲み物の味を表すとき(食べたとき・飲んだときの口あたり)
  • 人の性格
食べ物や飲み物の味の場合は、どちらもしつこくなくてさわやかな味という意味で使われます。
人の性格の場合も、しつこくない性格という意味合いで使われます。
この記事では、この2つの場面における「さっぱり」と「あっさり」の違いについて、例を出しながら説明します。

さっぱり・あっさりの違い

食べ物・飲み物の味の場合

食べ物・飲み物の味の場合、以下のような傾向が指摘されています(小野 2007, p.151)。
  • さっぱり:味がくどくなく、さわやかであること。
  • あっさり:油や調味料を控えた味のこと。

 

さっぱりの場合は、味がさわやかというニュアンスで使われる傾向があります(小野 2007, p.151)。以下のような例があります。

  • さっぱりした酢の物
  • さっぱりして食べやすい
  • さっぱりしたお水やお茶

 

あっさりの場合、油や調味料を控えていて、味が濃くないという意味合いで使われることが多いです。

  • こってりとした料理が続いたので、あっさりとしたものが食べたい
  • 甘さ控えめであっさりしている
  • あっさり塩味/スープ/豚骨/鶏ガラ
  • 油の量を抜いた、あっさりとした味わい

味が濃いという意味の「こってり」と対比されるのは「あっさり」のほうが多いですね。

Googleで検索すると、「ラーメン」「こってり系」「あっさり系」は89,500 件ヒットしたのに対し、「ラーメン」「こってり系」「さっぱり系」は4,420件でした(2023年5月現在)。

人の性格の場合

人の性格の場合、以下のような傾向が指摘されています(小野 2007, p. 151)。

  • さっぱり:物事にあまりこだわらない様子
  • あっさり:相手が物足りなく感じるほど淡泊である様子

「さっぱり」と「あっさり」のどちらも「しつこくない」という意味があるのですが、「あっさり」には「淡泊」というニュアンスも出てくることがあるようです。

 

「さっぱりした人が多いので」「あっさりした人が多いので」でGoogle検索すると、以下のような例がありました。

  • さっぱりした人が多いので、自分の意見ややってみたいことは何でも言える/人間関係に気を遣わずに仕事ができる/雰囲気がいい。
  • あっさりした人が多いので、 楽は楽/人間関係はちょっと物足りなく感じるかもしれません。

 

「さっぱりした人が多い」の後には、意見が言いやすいとか、人間関係に気を遣わなくていいなどが来る例が見られました。

「さっぱり」は、未練がなくて、思い切っている、後に何も残らないという意味もあります。後で何かを言われるということもないという安心感があるのかもしれません。

一方、「あっさりした人が多い」の後には、「楽」なども見られた一方、「ちょっと物足りない」という例もありました。

「あっさり」の意味に含まれる、淡泊さが関係しているのかと思われます。

 

性格に関係すると思われる「さっぱりした表情で」「あっさりした表情で」でGoogle検索すると、以下のような例がありました(一部改変して記載)。

【さっぱりした表情で】

  • 手堅い戦いで5選を果たした〇〇さんは、さっぱりした表情で朝を迎えた。
  • 離婚をした○○さんはさっぱりした表情でクリニックに通ってきます。
  • 〇〇はさっぱりした表情で引退会見を行なった。

【あっさりした表情で】

  • (新記録だったにもかかわらず)〇〇は驚くほどあっさりした表情で「すごいタイムではない」と言う。
  • すでに40kmも走ってきたとは思えない、割とあっさりした表情で、またすぐに走り出した。
  • 髪を触れられてもあっさりした表情でいるのは脈なしということでしょう。

「さっぱりした表情で」というと、後ぐされがない、未練がないという意味が出ることが多いようです。

「あっさりとした表情で」というと、もっと違う反応があってもいいのにというニュアンスで使われることも多いようです。

 

また、「さっぱりした表情で」は、引退や退任の会見等でよく使われていました。

「さっぱりした表情で」と「引退」をGoogle検索すると、1410件ヒットした一方、「あっさりとした表情で」と「引退」は9件のみでした。(2023年5月現在)。

スポーツ選手などが引退するときは「未練がましいことはない、やり切った」という意味のある「さっぱり」が使われやすいのかもしれません。

 

その他

筑波ウェブコーパスで調べたところ、「さっぱり」は、「一日の疲れをさっぱり洗い流す」など、「洗い流す」とよく共起するようです。「一日の疲れを全くなくす」という意味ですね。

また、「さっぱり」というと、外部からの評価ではなく、自分自身の心情を表現することが多いといわれています(山口 2003, p. 200)。

「シャワーを浴びて、(気分が)さっぱりした!」とは言えますが、「シャワーを浴びて、(気分が)あっさりした!」とはあまり言わないと思います。

 

「あっさり」の場合は、「あっさり諦める」「あっさり認める」「あっさり引き下がる」という表現がよく共起するようです。

「あっさり」の場合は、本来ならもう少し抵抗してもいいにもかかわらず、手軽に簡単にその行動をしてしまうという意味合いがあるのだと考えられます。

 

まとめ&ご興味のある方は

「さっぱり」と「あっさり」の違いについて簡単に紹介しました。

まとめると以下のようになります。

  • 「さっぱり」も「あっさり」も、食べ物・飲み物の味、人の性格でよく使われる。「しつこくない」という意味でどちらの語も似ている。
  • 食べ物・飲み物の味の場合、「さっぱり」は味がくどくなく、さわやかであるという意味、「あっさり」は油や調味料を控えていて、味が濃くないという意味で使われることが多い。
  • 人の性格の場合、「さっぱり」は物事にあまりこだわらない、「あっさり」は相手が物足りなく感じるほど淡泊であるという意味で使われることが多い。

参考文献