Hyland (2007)のライティングのクラスにおけるジャンルベースアプローチについての論文を読みました。

昨日の記事でジャンルとレジスターの違いについて書きましたが(詳しくはこちら)が、このジャンルを言語教育に取り入れた実践も行われているようです。(ただ、この「ジャンル」についても定義がいくつかあるようです。)

今回は以下の論文を読みました。

  • Hyland, Ken. 2007. “Genre Pedagogy: Language, Literacy and L2 Writing Instruction.” Journal of Second Language Writing 16(3): 148–64.

Hylandは下記のジャンルに関する本も出しています。

 

  • Hyland, Ken. Genre and second language writing. University of Michigan Press, 2004.

今回読んだ論文では第二言語のライティングのクラスでのジャンルを取り入れた教育の利点について述べていました。

Hylandは、通常のライティングのクラスでは、書く準備–>実際に書く–>見直す、というストラテジーに注目することが多く、うまく書けるようにするためにはどういう言語リソースが必要なのかはおざなりになることが多いと指摘しています。

ジャンルアプローチでは、学生にはがきや招待状、新聞記事など、クラスで扱いたいテキストのサンプルを出して、この1つ1つのテキストがどのような流れをしているのか、どういう語彙が使われているのかなどをまず分析させ、その後で似た様なテキストを書かせるそうです。

書くときのストラテジーだけではなくて、自分が書きたいと思う文章がどのような構造・スタイルをしているのか、どのような文法・語彙が必要なのかといった具体的なジャンルに関する意識を高めさせることで、学生のライティング能力の向上につながるといっていました。

ジャンルアプローチでは、例えば招待状なら招待状の構造や語彙・文法を(なんとなくではなくて)明示的に指導・評価することができるので、教師側にも利点があるともいっていました。

ジャンルアプローチは第二言語のライティングのクラスでは形は違えど、ある程度取り入れられているのかなとは思いますが、どうなのでしょうか?(私の担当したことのあるライティングのクラスでは一応モデルテキストがあって、それを分析してはいました。)ジャンルアプローチは小学校などでも取り入れられているみたいですが、幼いころに様々なジャンルに対する意識を高めるのはリテラシーの向上に有効かもしれないなと思いました。