「言語と宗教の社会学(Sociology of Language and Religion)」という、言語と宗教の社会的関係を探るような分野もあるそうです。
今回はその「言語と宗教の社会学(Sociology of Language and Religion)」の理論的枠組みとなるFishmanの以下の論文を読みました。
- Fishman, Joshua (2006). A Decalogue of Basic Theoretical Perspectives for a Sociology of Language and Religion. In Omoniyi, T. & Fishman, J.A. Explorations in the Sociology of Language and Religion. Amsterdam: John Benjaminsp. 13-25.
「The Sociology of Language and Religion」というウェブページもあるのですが、そこからも全文が読めます。(リンクはこちら)
論文のタイトルの「Decalogue(十戒)」にもあるとおり、Fishmanは宗教と言語の社会的関係について10の理論枠組みを提供しています。
簡単にまとめると以下の通りです。(詳しくは原文をご覧ください。)
ちなみに変種は、方言や母語話者以外が話す言葉など、言語のバリエーションのことです。
- 宗教言語(変種)は、その言語(変種)のみで存在するのではなく、さらに大きい多言語・多変種の言語資源(repertoire)の中で機能する。
- 上記1の変種は、社会内および社会間に存在し、変化していくものである。
- 宗教言語/変種は、他の言語/変種より安定している。
- 宗教言語/変種の地域語への翻訳が定着すると、その翻訳が神聖化するようになる。
- 新たな宗教変種等が生じ、広まると、言語資源が複雑化し、各変種の機能も差異化される。
- 社会文化的な変化を起こす要因は、宗教関連の社会言語的な変化の要因ともなる。
- 同じ宗教コミュニティに多数の宗教変種が共存することがある。
- 神聖化された言語の権力等は、言語計画等において大きな影響を及ぼすことが多い。
- 宗教言語・変種の機能は、不変ではない。
- 宗教的な言動(religious emphases)には流行り廃りがあり、その結果、宗教変種や、宗教変種の非宗教言語への影響、非宗教言語の宗教変種の影響も変動する。
この分野は今後は研究が増えていくのではないかなと思っているので、時間があるときに他の論文も読んでみたいです。