Brown and Levinsonのポライトネス理論について

Brown and LevinsonのPoliteness理論

1978年のBrown and Levinsonのポライトネス理論は大きな影響を与え続けています。

  • Brown, Penelope, and Stephen C. Levinson. Politeness: Some universals in language usage. Vol. 4. Cambridge university press, 1987.

日本語訳も出ているようです。

  • ペネロピ・ブラウン, スティーヴン・C・レヴィンソン(斉藤早智子他訳)ポライトネス : 言語使用におけるある普遍現象.  研究社, 2011.

また、ポライトネスについてわかりやすく説明した入門書も日本語ででているようです。

  • 滝浦真人. ポライトネス入門. 研究社 2008.
ポライトネス理論とは

ポライトネスとは直訳すると「丁寧さ」「礼儀正しさ」になってしまいますが、ポライトネス理論の「ポライトネス」とは会話を円滑にして、円満な対人関係を構築・維持するための言語の使用・行動のことを意味します(詳しい定義は原書をご覧ください)

円満な対人関係を保つための言語使用・行動を理論化したのがポライトネス理論です。

 

Brown and Levinsonは、人は「Face(フェイス・面子)」というものを持っているといっています。

Faceには以下の2つの種類があります。

  • ポジティブ・フェイス:相手と積極的にかかわって、認められたいという欲求
  • ネガティブ・フェイス:プライベートを保ちたい、邪魔されたくない、ネガティブな印象を与えたくない、相手にずかずか土足で入ってきてほしくないという欲求

人はこの2つのFace(フェイス・面子)を持っているといっています。

 

人とのコミュニケーションをするときには、相手との距離感をうまく保つというのはなかなか難しいですよね。

自分が親しいと思っていない相手から、やたらと馴れ馴れしく話しかけられるとイラっとくる人もいると思います。これは、プライベートを保ちたい、邪魔されたくないという「ネガティブフェイス」が満たされていない状況にあります。

また、好意を持っている人からずっとそっけない態度を取られたら、相手と関わりたいという「ポジティブフェイス」が満たされません。

(勿論、自分も意図せずとも同じようなことを相手にしている可能性もあります)

 

こういう、相手の「フェイス」を脅かす行為のことを「Face-threatening act」といっています。

 

こういった相手のフェイスを考えた配慮のことを「ポ ライトネス」と呼んでいます。

 

Positive politeness strategy/negative politeness strategy

例えば、皆さんが、あまり親しくない目上の人に何かを頼まなければならなくなったとします。

ただでさえ親しくないから距離があるにもかかわらず、「頼む」という行為は相手の「邪魔されたくない」というネガティブフェイスを脅かす行為になってしまいます。

そんなときは、何らかの手段でできる限り相手のメンツを保てるように配慮しなければならなくなることが多いです。

 

Brown and Levinsonは、この相手のメンツを保つためのストラテジーとして以下の2つを挙げています。

  • ポジティブ・ポライトネス・ストラテジー(positive politeness strategy):ポジティブ・フェイス(相手と積極的にかかわって、認められたいという欲求)を満たすための戦略
  • ネガティブ・ポライトネス・ストラテジー(negative politeness strategy):ネガティブ・フェイス(邪魔されたくない、ネガティブな印象を与えたくないという欲求)を満たすための戦略

ポジティブ・ポライトネス・ストラテジーの例としては以下のようなものがあります。

  • 「わー、すごいね!」と大げさに物事をいう
  • 冗談を言う
  • 仲間意識を表すような言葉を使う
  • 相手との意見の相違を避けたりする

こういう戦略を使うことで、相手との距離感を縮めることができます。

ネガティブ・ポライトネス・ストラテジーの例としては以下のようなものがあります。

  • 間接的な表現を使う
  • お願いするときに「ーしてください」でなく「-してくれますか?」と疑問形を使う
  • 「忙しいときに申し訳ないけど」という一言を入れる
  • 敬語を使う

なお、敬語はネガティブ・ポライトネスストラテジーの例に挙げられていますが、これについては批判も出ています。

 

Brown and Levinsonの本にはたくさん例が出ていますので、詳しくはそちらをご覧ください。

 

なお、上記の例の上司に何かお願いするときは、相手の「ネガティブ・フェイス」を脅かさないようにするため、ネガティブ・ポライトネス・ストラテジーを使うことができます。

 

ポライトネス理論に対する批判

批判についてはずいぶん前にですが記載した記事をご覧ください。

ポライトネスの分野もポスト構造主義・社会構築主義の影響を受けているようです。



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