ブルームのタキソノミー(Bloom’s Taxonomy)6段階と改訂版の違い・言語教育への影響

この記事では、ブルームのタキソノミー(教育目標分類)(Bloom’s Taxonomy)とその改訂版について整理したうえで、それが CLIL やトランスランゲージング教育論といった言語教育の理論にどう影響しているのかを紹介します。

ブルームのタキソノミー(教育目標分類)6段階と改訂版の違い

ブルームのタキソノミー(教育目標分類)

ブルームのタキソノミーは、アメリカの教育心理学者ベンジャミン・ブルーム(Benjamin Bloom)が1956年に提唱した教育目標を分類するための枠組みです。

ブルームは、学習には、認知(cognitive)・情意(affective)・感覚/精神運動(psychomotor domain)の3つの領域があると考えました。

領域扱うもの
認知領域(cognitive domain)知識と思考語彙を覚える、テクストを分析する
情意領域(affective domain)態度・価値・感情学習への関心、他文化への態度
精神運動領域(psychomotor domain)身体的な技能楽器の演奏、機械の操作、運動技能など

このうち有名なのは「認知領域」です。ブルームは、認知を「知識(knowledge)」「理解(comprehension)」「応用(application)」「分析(analysis)」「統合(synthesis)」「評価(evaluation)」の6つの段階に分類しました。

2001年の改訂版

その後、2001年にブルームのもとで学んだLorin Andersonらによって改訂版が出されます。

改訂版ブルームのタキソノミーは、従来のブルームのタキソノミー(1956年)を見直し、認知プロセスの次元として、「記憶する(remember )」、「理解する(understand )」、「応用する(apply)」、「分析する (analyze)」, 「評価する(evaluate )」、「創造する(create)」の6つを提示しました。

なお、現在「ブルームのタキソノミー」として紹介されているものの多くは、この改訂版の6段階です。

上記の図のとおり、この6つは階層的になっていて、「記憶する」が一番低次、「創造する」が一番高次の認知活動となっています。

それぞれの6つの認知プロセスの内容とその段階における具体的な教育活動の例は以下のとおりです。

段階定義下位プロセス活動例(筆者による)
① 記憶する
Remember
長期記憶から関連する知識を取り出す再認する/想起するリストを作る、年表を作る、暗唱する
② 理解する
Understand
口頭・記述・図表によるメッセージから意味を構築する解釈する/例示する/分類する/要約する/推論する/比較する/説明する要約する、図解する、自分のことばで言い直す
③ 応用する
Apply
ある手続きを、与えられた状況で実行または使用する実行する/実装するロールプレイ、シミュレーション、作文
④ 分析する
Analyze
素材を構成部分に分け、部分どうしの関係および全体の構造・目的との関係を明らかにする区別する/組織化する/属性づける比較表を作る、調査する、フローチャートにする
⑤ 評価する
Evaluate
基準や標準にもとづいて判断を下す点検する/批評するディベート、意見文、ルーブリックによる評価
⑥ 創造する
Create
要素を組み合わせて、一貫性のあるまとまりを形づくる。要素を新しいパターンや構造に再編成する生成する/計画する/産出する企画書を書く、作品を制作する、提案する

出典:Anderson & Krathwohl(2001)に基づき要約。「活動例」は筆者による。

また、同じ「理解する」でも、語彙を理解するのと、学習ストラテジーについて理解するのとでは、まったく別のことをしています。改訂版では、「知識の次元」として事実的知識、概念的知識、手続き的知識、メタ認知的知識の4つを提唱しました。

種類定義下位区分
事実的知識
factual knowledge
ある分野を理解したり、その分野の問題を解いたりするために知っておくべき、基本的な事実・用語・要素用語の知識/個別的事実と要素の知識
概念的知識
conceptual knowledge
その分野に関わる分類・原理・一般化・理論・モデル・構造の知識。要素どうしがどう関係し、まとまりとして機能するか分類とカテゴリーの知識/原理と一般化の知識/理論・モデル・構造の知識
手続き的知識
procedural knowledge
何かを行うための知識。探究の方法、技能、アルゴリズム、技法、方法論と、それらを使う際の基準分野固有の技能とアルゴリズムの知識/分野固有の技法と方法の知識/どの手続きをいつ使うかを判断する基準の知識
メタ認知的知識
metacognitive knowledge
認知一般についての知識と、自分自身の認知への気づき・知識方略的知識/認知課題についての知識(文脈的・条件的知識を含む)/自己知識

出典:Anderson, L. W., & Krathwohl, D. R. (Eds.) (2001). に基づき要約。

 

この4つ(知識の次元)と6つ(認知プロセスの次元)を掛け合わせた4×6のマス目がタキソノミー・テーブルです。

授業の目標・活動・評価をそれぞれこの表に置いてみると、「目標はメタ認知的知識の『評価する』なのに、テストは事実的知識の『記憶する』しか測っていない」といったズレが目に見えるようになります。

知識の次元認知プロセスの次元
1. 記憶する2. 理解する3. 応用する4. 分析する5. 評価する6. 創造する
A. 事実的知識
B. 概念的知識
C. 手続き的知識
D. メタ認知的知識

出典:Anderson, L. W., & Krathwohl, D. R. (Eds.) (2001)

 

教師は、これらの認知プロセスや知識の次元を参考に、自分の生徒にあった学習目標を立てることができます。また、これは教科に限ったことではないので、様々な教育現場で応用することができます。

主な改訂版の変更点

2001年の改訂版の変更のポイントは大きく3つです。

  • 名詞から動詞へ:「知識(knowledge)」が「記憶する(remember)」になったように、カテゴリーが動詞になりました。これは、学習を静的なものではなく、「している行為」としてとらえ直しています。
  • 「創造する」が最上位に:「創造する(create)」という行為を最上位の認知活動においています。
  • 1次元から2次元へ:「どんな思考をするか」という認知プロセスだけでなく、「どんな知識について思考するか」という「知識の次元」も同時にみるようにしました。

詳しく知りたい方は、原書である『Taxonomy for Learning, Teaching, and Assessing, A: A Revision of Bloom’s Taxonomy of Educational Objectives, Abridged Edition』をご覧ください。2023年に日本語の翻訳版『学習する、教える、評定するためのタキソノミー —ブルームの『教育目標のタキソノミー』の改訂版—』も出版されています。

使うときに気をつけたいこと

ブルームのタキソノミーは、広く使われている枠組みですが、批判もあります。

例えば、Case(2013)は、本来アセスメント(評価)の道具だったタキソノミーが「教える順序」の処方箋として読み替えられてきたと指摘します。その結果、「この学習者にはまだ高次思考は早い」と、苦手な学習者の期待値を下げることの正当化に使われてしまう、といっています。

さらに、6段階が本当にこの順序で難しくなるのか、特に上位3つの順序については、確固たる実証的裏づけがあるわけではありません。あくまで整理のための枠組みです。

言語教育への影響

ブルームのタキソノミーは、言語教育にも影響を及ぼしています。その例として、CLILとトランスランゲージング教育論をみていきます。

CLIL(内容言語統合型学習)

『内容言語統合型学習(CLIL)とは何か?CLILの「4つのC」について(Content, Communication, Cognition, Community)』でも紹介したように、CLIL は Content(内容)・Communication(言語)・Cognition(思考)・Community/Culture(協学・文化)の「4つのC」を柱にしています。

このうちCognition(思考)の部分に、ブルームのタキソノミーの影響が見られます。

CLIL では学習を表面的な学習(surface learning)と深い学習(deep learning)に分け、両方をバランスよく取り入れることを勧めます。表面的な学習は知識の理解や記憶、深い学習はその内容を既存の知識・経験と結びつけたり、批判的に考察したりすることです。

ただ、具体的に何が表面的で何が深い学習なのかは、そのままではわかりにくいです。

このため、CLILでは、改訂版ブルームのタキソノミーを援用し、前半の3つ(① 記憶する/② 理解する/③ 応用する)を低次思考力(LOTS(low-order thinking skills))、後半の3つ(④分析する、⑤評価する、⑥創造する)を高次思考力(HOTS(high-order thinking skills))とし、このLOTSとHOTSをバランスよくいれることを推奨しています。

トランスランゲージング教育論

『トランスランゲージング教育論:目的と3つの綱(スタンス、デザイン、シフト)について』で紹介したように、トランスランゲージング教育論は、学習者が持つ言語資源を切り分けずにひとつのレパートリーとして捉え、それを学習に活かそうとする考え方です。

その授業づくりの枠組みとして、ガルシアら(2017/邦訳2024)らは、トランスランゲージング授業デザインサイクルを示しています。このサイクルは「探求する(explorar)」、「評価する(evaluar)」、「想像する(imaginar)」、「発表する(presentar)」、「実行する(implementar)」という5つのステージからなります。

特にブルームを下敷きにしていると明言しているわけではありませんが、「評価する」「想像する」といった段階を授業の中心に据えるという発想は共有されていると考えられます。

もちろん、トランスランゲージング授業デザインサイクルでは、階層のように階段を上る梯子ではなく、行き来するサイクルとして描かれています。また、サイクルの最後を「実行する」という社会的行動につなげるという点で、批判的応用言語学や批判的教育学の影響が見て取れますので、違いも多くあります。

まとめ

本記事では、ブルームのタキソノミー(Bloom’s Taxonomy)と言語教育への影響について紹介しました。

まとめると以下のとおりになります。

  • ブルームのタキソノミーは、教育目標を「認知」「情意」「精神運動」の3領域に分けた枠組みで、なかでも認知領域の分類が広く知られている。
  • 2001年の改訂版では、各カテゴリーが名詞から動詞になり、「創造する」が最上位に置かれ、「認知プロセスの次元」と「知識の次元」の2次元でとらえるようになった。
  • この2つの次元を掛け合わせたタキソノミー・テーブルを使うと、授業の目標・活動・評価がずれていないかを点検することができる。
  • CLILは改訂版タキソノミーを援用し、6段階を低次思考力(LOTS)と高次思考力(HOTS)に分け、両者をバランスよく取り入れることを推奨している。
  • トランスランゲージング授業デザインサイクルも高次思考を中心に据えるが、階層ではなく循環として描かれ、最後に社会的な行動(実行)を置く点が異なる。

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参考文献