応用言語学者Graddol(1994)の言語に対する3つの考え方についての論文を読みました。

ちょっと前に視聴した動画で紹介されていたGraddolの言語に対する3つの考え方をまとめた論文を読みました。

  • Graddol, David. 1994. “Three Models of Language Description.” In Media Texts: Authors and Readers, Clevedon, UK: Multilingual Matters, 1–21.

こうやって分けて整理してくれると、自分の頭を整理するためにも、自分が読んでいる論文がどういう立場に基づくのかを考える時にも役に立ちます。1994年にこんな説明本が出ていたのですね。

モデル1-構造主義

主な学者:ソシュール、チョムスキー

特徴:

  • 言語をシステムとしてとらえている
  • コミュニケーションは意味(メッセージ)を伝達すること
  • 言語内のバラエティ(方言等)には着目しておらず、標準語中心

モデル2-社会モデル

主な学者:マリノフスキー(人類学者)、ハリデー

特徴:

  • 言語は社会とは切っても切り離せない
  • コミュニケーションの際に、同じ言葉を使っていても、違う社会状況だと意味が変わってくる(つまり、同じ「おはよう」でも話す相手や場所、メールか口頭かなどのモードによって意味が変わってくる)。意味とは、言語と社会コンテクスト(状況・場面)との関わりの中で生じるもの
  • 言語内のバラエティ(方言等)に注目

モデル3-ポストモダン

主な学者:(Graddolの論文では記載なしだが、おそらくフーコーなど)

特徴:

  • 言語だけでなく非言語(服装、写真、音楽等)にも注目。単語よりも記号としての「サイン」。
  • 意味というのは共に構築され、交渉されていくもの(対話をする中で、意味が作り出され、また変化していく)
  • テキストは読んで理解するものではなく、消費され、使用され、利用され、戦う場(site of struggle)を生み出すもの
  • 「アイデンティティ」でなく「主観性(subjectivity)」に注目-言語を使うことで「主観性」が構築される。

前回の記事で紹介したPennycookの批判的応用言語学やトランスレーション・スタディーズでもそうですが、最近はポストモダンな考えが増えているようですね。トランスレーション・スタディーズは最近デジタルメディアも注目が高まっているみたいですが。

流行り廃りはあると思いますが、自分の研究に合うものをうまく使っていきたいです。