敬語の分類について(素材敬語・対者敬語)

敬語の分類

敬語の分類でよく使われるのが、日本語の敬語に関する代表的な学者の一人の辻村敏樹の分類す。

「敬語論考」(1992)は有名ですね↓

  • 辻村敏樹. 敬語論考. 明治書院, 1992.

 

今回読んだのは、以下の論文です。早稲田大学のDspaceというデータベースから無料でアクセスできました。

  • 辻村敏樹(1965)現代語 ‐敬語‐. 講座日本語教育 1 (1). 1-16. (アドレスはこちら。アクセス日:2015年6月)

このp.2に敬語の分類の表がありました。
上記の論文 p.2から引用

 

素材敬語と対者敬語

まず素材敬語(referent honorifics)と対者敬語(addressee honorifics)に分けています。

素材敬語は話の材料になる人やモノに対する敬語、対者敬語は聞き手や読み手に対する敬語になります。

素材敬語・対者敬語を表すための言葉表現が「丁寧語」「尊敬語」「謙譲語」などと言われる形になります。

 

素材敬語

素材敬語の主な言語表現は尊敬語(deferential forms)や謙譲語(humble forms)です。

「先生がおっしゃった」「Aさんが召し上がる」のような尊敬語は、「先生」や「Aさん」のように、その動詞の主語(話の材料となる人)を高いものとみなす言い方です。

また「小生」とか「(私は)メールを差し上げた」いう謙譲語は、「私」という動詞の主語(話の材料となる人)を低いものとみなす言い方です。

聞き手・読み手ではなく、話の材料になる人やモノに対する敬語なので、素材敬語と呼ばれます。

 

対者敬語

対者敬語の主な言語表現はいわゆる丁寧語で、代表的なのは「です/ます」で終わる丁寧形です。

「わたしは昨日大学を休んだんです」とか「Aさんは●●と言っていましたよ」というときの「です」や「ました」は、「話の材料」である「わたし」に対してのものではなくて、聞き手や読み手に対するものなので、対者敬語となります。

(聞き手・読み手が家族や親しい友達だったら、「大学休んだんだ」とか「Aさんは●●と言っていた」となる確率が高く、普通「です/ます」は出てきません。)

ちなみに、「丁寧語」というのは「自他にかかわらず、すべての物言いを丁寧にすることば」(p.1)だそうで、「お花」とか「お空」とかいういわゆる「美化語」といわれるものも「丁寧語」に含めるのが通説です。

 

まとめ

素材敬語と対者敬語についてまとめました。何かのお役に立てれば幸いです。