Larsen-Freemanの最新の文法学習・教授法についての論文(2015)を読みました。

昨日の記事に続いてLarsen-Freemanの論文をもう一本読みました。文法学習・教授法に関するものです。

  • Diane Larsen-Freeman (2015). Research into practice: Grammar learning and teaching. Language Teaching, 48, pp 263-280 doi:10.1017/S0261444814000408

Larsen-Freemanは文法についても幅広く執筆しています。

  • Larsen-Freeman, Diane. Teaching language: From grammar to grammaring. Heinle & Heinle Pub, 2003.
  • Larsen-Freeman, Diane, et al. The Grammar Book: Form, Meaning, and Use for English Language Teachers. National Geographic Learning, Heinle Cengage Learning, 2015.

この論文では、文法学習・教授法に関する第二言語習得・応用言語学の文献は以下の3つに分かれるといっています。

①現場にほとんど影響を及ぼさなかったもの

Larsen-Freemanはこのカテゴリーにクラッシェン(Krashen)の提唱したノン・インターフェース仮説を挙げています。ノン・インターフェース仮説は、文法学習は言語習得には影響を及ぼさず、必要なのは理解可能なインプット(comprehensible input)だというものです。文法学習をしなくとも、自分の現在の能力より少し高いレベルぐらいの目標言語をきいていれば、言語を習得するという仮説で、非常に有名な仮説ではあるのですが、言語教育で文法教育がなくなったわけではなく、現場への影響力はほぼなかったとLarsen-Freemanはいっています。

 

②現場に少し影響をおよぼしたもの

このカテゴリーにはForm-focused instruction(フォームに注目した指導)、いわゆるフォーカス・オン・フォームを挙げています。

あえて特定のフォーム(過去形・現在形・三人称単数)などに学習者の目を向けさせる指導のことです。
ただ、このフォームに注目させること自体には多くの学者が賛同しているものの、実際のクラスでの導入方法については、意見が分かれていることなどの理由から、実際の現場にはそれほど影響を及ぼしていないといっていました。

 

③現場に大きな影響を及ぼす可能性があるもの

このカテゴリーには、文法に関する見方を変えることを挙げています(reconceiving grammar)。つまり、文法を学ばなければならない一連の規則と考えるのではなく、自らが言いたいことを言い、自分の社会的・イデオロギー的立場を示すための選択肢を与えてくれるものと考えることを提案しています。(詳しくは前回記事

この文法に関するLarsen-Freemanの立場については上記の「Teaching Language: From Grammar to Grammaring」に詳しく記載されていました。また、機会があればこの本についても触れられればと思います。