ら抜きことばとは?ら抜きことばの例と、ら抜きが起こる理由

ら抜きことばとは?

日本語は五段活用動詞と、上一段・下一段活用の一段活用動詞で活用の仕方が変わります。

(日本語教育では五段活用動詞をGroup Iや「u-verbs」、上一段・下一段活用動詞をGroup IIや「ru-verbs」といったりします。)

ら抜きことばは、一段活用動詞の可能形の活用で「ら」がなくなることを言います。

五段活用動詞一段活用動詞
可能書ける(-eru)見られる(-rareru)
→(ら抜き言葉)見れる(-reru)

また、一段活用動詞だけでなく、カ行変格活用の動詞「来る」も、「ら」が落ちて、よくら抜きになります(「来れる」が「来れる」になります)。

 

ら抜きがおこる理由

一段活用動詞の「られる」という形は、可能だけでなく、受身・尊敬の意味でも使われます。

  • この野草は食べられる(可能)
  • 私のおやつを妹に食べられた(受身)
  • 社長はもらったものは全部おいしそうに食べられる(尊敬)

つまり、「られる」の形で3つの意味を担っていることになります。

 

実は明治時代は、五段活用動詞も、「-areru」という活用で、可能・受身・尊敬の3つの意味を担っていたようです。(庵 2012, p. 313

五段活用動詞一段活用動詞
可能書かれる(-areru)見られる(-rareru)
受身/尊敬

↑例えば、「文章が書かれる」「文章が読まれる」というのが、現在の「文章が書ける」「文章が読める」の意味でも使われていたようです。

 

ただ、明治時代ごろから五段活用動詞で、可能の意味と、受身・尊敬を切り離す変化が起こりました。(庵 2012, p. 313

五段活動動詞一段活用動詞
可能書ける(-eru)見られる(-rareru)
受身/尊敬書かれる(-areru)

↑現在は、五段活用動詞の可能形が「書ける」「読める」などになり、「書かれる」「読まれる」といった受身・尊敬とは違う活用になっています。

ただ、一段活用動詞はその変化は起こらず、可能・受身・尊敬ともに「られる」の形のままでした。

 

ら抜きことばは、この明治時代ごろから五段活用動詞に起こった活用の変化が、一段活用動詞にも起こっているといえます。

なお、ら抜きことばは、話し言葉では昭和初期から現れ、戦後に増加したといわれています(文化庁 1995、アクセス日:2021年3月12日)。

五段活用動詞一段活用動詞
可能書ける(-eru)見られる(-rareru)
→(ら抜き言葉)見れる(-reru)
受身/尊敬書かれる(-areru)見られる(-rareru)

↑五段活用動詞と同様、受身/尊敬から可能を切り離す形になりますね。

 

ら抜きことばの現状

ら抜きことばの現状について知るための調査としては、2015年度(平成27年度)の文化庁の「国語に関する世論調査」があります(アクセス日:2021年3月12日)。

この調査で、5つの動詞について、以下の文で、ら抜きことばの使用について聞いたところ、下記の結果になりました。

(「どちらも使う」/「わからない」の回答をこの記事では省略しているので、全体で100%にはなりません)

ら抜きことばのほうを普通に使うと回答した人の割合ら抜きことばでないほうを普通に使うと回答した人の割合
見る今年は初日の出が見れた (48.4%)今年は初日の出が見られた (44.6%)
出る早く出れる (45.1%)早く出られる? (44.3%)
食べるこんなにたくさんは食べれない (32.0%)こんなにたくさんは食べられない (60.8%)
考える彼が来るなんて考えれない(7.8%)彼が来るなんて考えられない(88.6%)
来る朝5時に来れますか(44.1%)朝5時に来られますか (45.4%)

 

「見る」「出る」については、若干ですが「見れる」「出れる」とら抜きことばを使う人のほうが多いという結果になりました。

ただ「考える」「食べる」については、ら抜きことばを使わない人のほうが多数派だったので、動詞の種類(その動詞の使用頻度)などによっても違うようです。

また、世代別では若い人のほうがら抜きことばを普通に使うと回答した割合が高くなる傾向がありました。

 

まとめ

ら抜きことばと、ら抜きことばが起こる理由について紹介しました。

ら抜きことばについて興味のある方は以下の本に詳しいと思います。

  • 小松英雄(2013)『日本語はなぜ変化するか 母語​としての日本語の歴史[新装版]』(笠間書院)