「である体」の作り方・使い分けとその歴史について(です・ます体・だ体との違い)

日本語の文体と「である体」

この記事では、「である体」の作り方・使い分けとその歴史について説明します。

日本語の文体と「である体」

日本語の文体(文末の形)は、大きく分けて、敬体と常体に分かれます。

敬体は「丁寧体(polite form)」「ですます体」、常体は「普通体(plain form)」「だ・である体」ともいわれます。

  • 敬体(丁寧体、です・ます体)
  • 常体(普通体、だ・である体)

一般的に、「敬体(です・ます体)」はやわらかい印象で、常体(だ・である体)はかたい印象があります。

「である体」というのは、「だ体」とともに、常体に含まれるものです。

「である体」の作り方

「である体」は以下のように作ります。一番右の列が「である体」になっています。

敬体(丁寧体、です・ます体)常体(普通体、だ・である体)
名詞
ナ形容詞(形容動詞)
学生です
学生ではありません
学生でした
学生ではありませんでした
学生だ
学生ではない
学生だった
学生ではなかった
学生である

学生であった

イ形容詞(形容詞)楽しいです
楽しくないです
楽しかったです
楽しくなかったです
楽しい
楽しくない
楽しかった
楽しくなかった
動詞読みます
読みません
読みました
読みませんでした
読む
読まない
読んた
読まなかった
その他寝るでしょう
有名なのです
遊びましょう
寝るだろう
有名なのだ
遊ぼう
読むであろう
有名なのである

「である体」の場合、名詞やナ形容詞(形容動詞)の「だ」や「だった」が、「である」「であった」 になります。

「病気だ⇒病気である」、「静かだった⇒静かであった」という風に変わります。

「だろう」は「であろう」になります。「遊ぶだろう⇒遊ぶであろう」になります。

それ以外は、「だ体」と同じです。

 

使い分け

話し言葉・書き言葉において、敬体と常体は以下のように使い分けられます(近藤・小森 2012, p. 173)。

ただ、常に同じ文体で統一されているわけではなく、スタイルシフトといって敬体・常体が入り混じることもよくあります。

敬体(丁寧体、です・ます体)常体(普通体、だ・である体)
話し言葉
  • 目上の人・知らない人など距離のある相手と話すとき
  • 改まった場面で話すとき
  • 講義やニュース報道など、不特定多数の人に向けて話すとき
  • 家族・友達など親しい人と話すとき
  • 飲み会などのくだけた場面で話すとき
  • 話し手の感情が表出するとき(「痛い!」など)
  • 独り言
書き言葉
  • 手紙やメールなど、特定の読み手に宛てたもの
  • スピーチの原稿やインタビュー記事など、話し言葉を意識したもの
  • 子どものための本やエッセイなど平易な言葉でかかれたもの
  • 自分の日記や新聞・雑誌の記事など、特定の読み手が意識されないもの
  • 公的文書
  • レポート・論文などの学術的な文章

「である体」は書き言葉であらわれ、特にレポートや論文などでの学術的な論文や公的文書でよく見られます。

「である体」は、日本語教育では、学術的文章を学ぶための「アカデミック・ライティング」のクラスでは必ずといっても紹介される項目です。

大学1年生のスタディスキルのクラスなどで、紹介されることもあります。

「である体」の歴史

「である体」の歴史は浅く、明治以降です。

明治時代、西欧の概念を日本語に輸入するため、翻訳を通して様々な新語が作られました。

「である」という言い方は、beingなどの西欧語の翻訳の結果、つくられた日本語だといわれています(柳父 1982)

今までの日本語でも「である」という表現はあったのですが、あまり使われていませんでした。

今日の「である」と言い方を作ったのは、蘭学者たちです。

『和蘭字彙』(1855-1858年)では、英語のbe動詞に当たるオランダ語の「zijn動詞」が出てくる例文で、「 アル」と「アル」の上に、小さな文字で書いてある箇所が複数見られるそうです。

おそらくzijn動詞を「アル」と翻訳したものの、「それは正しき人々ある」のように「ある」のみだと座りが悪いため、「それは正しき人々 アル」と「で」を送り仮名のようにつけたのではと考えられています。

この文体が、英語の翻訳でも使われるようになり、明治初期のころに、翻訳以外の文章にも使われるようになりました。

それが今に至っているそうです。

まとめ&ご興味のある方は

「である体」の作り方・使い分けとその歴史について説明しました。

まとめると以下のようになります。

  • 「である体」は、「だ体」とともに、日本語の文体の常体に含まれるものである。
  • 「である体」では、「だ・だった」が「である」「であった」に、「だろう」が「であろう」になる。
  • 「である体」は、レポートや論文などでの学術的な論文や公的文書でよくみられる。
  • 「である体」が一般に使用されるようになったのは、明治以降といわれる。

 

ご興味のある方は、以下の記事もご覧ください。

参考文献

「使い分け」の箇所を記載する際に参考にしました。

 

「である体」の歴史についてはこの本をもとに記載しました。この本では、「社会」、「個人」「近代」「美」「恋愛」「存在」「自然」「権利」「自由」「彼、彼女」などの明治時代の和製漢語がどう成立していったかを紹介しています。(ご興味のある方は「明治時代の和製漢語:「Society」の訳語が「社会」に定着するまで」もご覧ください)