日本語アカデミックライティングで便利な教科書のまとめ(母語話者の学部生・中上級日本語学習者向け)

この記事では日本語の論文やレポート作成等、日本語のアカデミックライティングで使える教材を紹介します。

まず、母語話者・日本語学習者両方を対象にした教材を紹介し、その後、主に日本語学習者対象の教材を紹介します。

 

母語話者・日本語学習者向けの教材

① 留学生と日本人学生のためのレポート・論文表現ハンドブック

まず紹介するのは以下の本です。

  • 二通他(2009)留学生と日本人学生のためのレポート・論文表現ハンドブック. 東京大学出版会

この本では265の文型と78の接続表現について解説しています。

クラスで使うというより、学生がレポート・論文を執筆するときや、教員が指導するときに辞書的に使える教材だと思います。

以下の3章にわかれています。

I.   レポート・論文を書く前に
II.  レポート・論文の表現
III. レポート・論文の接続表現

 

「I.   レポート・論文を書く前に」では、論文のタイプや、アウトラインの書き方などが説明されています。

「II. レポート・論文の表現」では、「研究の対象と背景」「先行研究の提示」「研究目的と研究行動の概略」等、論文の各パートごとによく使われる表現が紹介されています。

実例もあるので、書くときに参考になります。

「III. レポート・論文の接続表現」では、「並列」「選択」「焦点化」等、接続表現と実例が紹介されています。

 

② Good Writingへのパスポート-読み手と構成を意識した日本語ライティング

次に紹介する本は、主に大学1年生向けの教育や、2年生以降の文章執筆演習などの授業で使うことを想定した教科書です。

1年間の授業で使うことを前提としています。

  • 田中他(2014). Good Writingへのパスポート-読み手と構成を意識した日本語ライティング. くろしお出版

 

読み手を意識して、効果的・魅力的な文章を書くことを目的とした教材です。

リサーチペーパーのみだけでなく、「ナラティブ」「描写」「説明」「論証」など、書く目的や相手が変わることによって、どう書き方を変えていくべきかということが意識できるようになっています。

以下の4つのパートに分かれています。

  • Part I:Good Writingを目指そう
  • Part II:パラグラフ・ライティング
  • Part III:ミックスモードのパラグラフ・ライティング
  • Part IV:資料

Part Iでは、イントロダクションとして、Good Writingに必要なこととして相手を意識することの大切さ等を説明したあと、「文学的文章」と「説明的文章」といった文章の種類と目的、文章の構成について説明をしています。

Part IIでは、「ナラティブ」「描写」「説明」「論証」について、その文体や構成などを学べるようになっています。最後にタスクを通して自分でも文章を作成できます。

Part IIIでは、リサーチペーパーを書くために必要な情報収集方法やアウトラインの書き方などが書かれています。

Part IVは、資料として、書くときのチェックリストなどが紹介されています。

 

③ ピアで学ぶ大学生・留学生の日本語コミュニケーション―プレゼンテーションとライティング

この教科書も、大学のクラスで使うことを前提にしたものです。

また、クラスメートとのピア活動を重視しているのが特徴です。

主に大学1年生向けの教育等で使うことを前提とした教科書です。

  • 大島弥生他(2012). ピアで学ぶ大学生・留学生の日本語コミュニケーション―プレゼンテーションとライティング. ひつじ書房

二部構成になっています。

第一部では学習(研究)計画書や志望動機書を書き、発表できるようになっています。

第二部では、ブック・トークという、本を紹介しあい、ポスター発表を行い、これら活動を基に、レポート執筆に結び付けられるようになっています。

 

 

④ 論文・レポートの基本

この本は、論文・レポートの書き方を説明している本です。

特に対象は指定されていないようですが、大学1年生のクラス等で使えると思います。

 

論文の考え方を知る第1部と、論文の表現を磨く第2部の2つで構成されてます。

第一部は論文の構成・その背後にある考え方を説明しています。

問いを立てるところから、論文にまとめて校正するところまで、ステップを踏んで説明しています。

第二部は論文を書くにあたっての日本語表現を紹介しています。

 

  • 石黒圭(2012). ピアで学ぶ大学生・留学生の日本語コミュニケーション―プレゼンテーションとライティング. ひつじ書房

 

日本語中上級学習者向けの教材

次に、日本語中上級学習者を主に対象としたアカデミックライティングの教材を紹介します。

①大学で学ぶための日本語ライティング

この本は短文→段落→一般的な文書→大学レポートと段階を踏んでアカデミックライティングを伸ばせるようにした教科書です。

  • 佐々木瑞枝他 (2006) 大学で学ぶための日本語ライティング. ジャパンタイムズ

 

10課構成で、3つのレベルにわかれています。

第1課~第4課まではレベル1で、短い文や段落を作る練習として、簡潔に回答する、情報を文章にするといった活動があります。

第5課~第7課はレベル2で、いろいろな文章を書く練習として、体験したことを報告する文、テーマに沿った意見文を書く練習、自己アピール文を書く練習が含まれています。

第8章~第10章はレベル3で、論理的なレポートを書くための練習をします。

 

  • 佐々木瑞枝他 (2001) 大学で学ぶためのアカデミック・ジャパニーズ. ジャパンタイムズ

↑この大学生活に必要なノートの取り方、資料読解、先生とのやり取り、スピーチ等を含めた「大学で学ぶためのアカデミック・ジャパニーズ」という本の姉妹編になっています。

②アカデミック・ライティングのためのパラフレーズ演習

この本はアカデミック・ライティングを学ぶ留学生のために作られたテキストです。

とはいえ、レポートや論文の書き方を学ぶものではなく、話し言葉と書き言葉にするための様々なパラフレーズができるようになることを目的にした演習本です。

各課は簡単な説明があったあと、ステップ1~3にわけて演習をやる中で様々な言い換え、書き換えが学べるようになっています。

 

  • 鎌田他 (2014) アカデミック・ライティングのためのパラフレーズ演習. スリーエーネットワーク

3部構成になっています。

第1部は、単語レベルの狭い範囲のパラフレーズ演習です。話し言葉を書き言葉にしたり、名詞化したり、和語を漢語に書き換えるといった問題があります。

第2部では、意味を読み取って言い換えるという広範囲のパラフレーズ演習です。長い文・複数の文を短くしたり、簡潔な表現にしたりといった問題があります。

第3部は、実践問題になっています。

 

アカデミック・ライティングを授業の宿題や、学生の自習用に使えるのではと思います。

③ここがポイント! レポート・論文を書くための日本語文法

これは、日本語でレポートや論文を書くために必要な文法を学ぶ本です。レポートや論文を書く際に謝りやすい文法項目を扱っています。

 

  • 小森他(2016) ここがポイント! レポート・論文を書くための日本語文法. くろしお出版

 

全14課で、前半は文レベルの使い方に関わる文法項目、後半は談話レベルの使い方に関わる文法項目を扱っています。

例えば、「こと」と「の」の使い分けや、語彙の使い分け、「は」と「が」の使い分け、「こ」と「そ」の使い分けなどが紹介されています。

各課は2つのステップにわかれています。ステップ1では基本的な使い方を学び、ステップ2は応用的な使い方を学びます。

各課の最後には実践問題も用意されています。

 

④日本語を学ぶ人のための アカデミック・ライティング講座

この教科書は、総合的なアカデミック・ライティング力をつけることを目的とした教材です。

  • 伊集院他(2020) 日本語を学ぶ人のための アカデミック・ライティング講座. アスク出版

 

この教科書は7課にわかれています。

第2課~第6課は「日本・日本人」「テクノロジー」「教育」など各課ごとにトピックがあり、各課がステップ1~3の3段階にわかれています。

ステップ1では、「アカデミック・ライティングにふさわしいスタイル」として、基礎的な書きことばの特徴について学びます。

ステップ2では、「文章に関わる文法・言語表現」として、「思う」「考える」「思われる」「考えられる」の違いなどを、細かい表現を学びます。

ステップ3では、「内容・構成」として、内容を伝わりやすくしたり、論理構成を考えたりする活動が含められています。

それぞれのステップで「書く前に」「考えよう」「書いてみよう」といった活動があり、授業で使いやすいのではと思います。

 

まとめ

この記事では日本語の論文やレポート作成等、日本語のアカデミックライティングで使える教材を紹介しました。

 

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