デジタルリテラシーズ(Digital Literacies)とは?デジタルリテラシーズの入門書について

デジタルリテラシーズの入門書

デジタルリテラシーについての入門書を探していたところ、以下の本を紹介していただきました。

  • Jones, Rodney H., and Christoph A. Hafner. Understanding digital literacies: A practical introduction. Routledge, 2012. 

この本は2部構成になっていて、第1部では「デジタルツール(Digital Tools)」として、ハイパーテキストや、ビジュアルデザイン、オンラインでの交流などについて説明しています。

第2部では、「デジタル実践(Digital Practices)」として、オンラインでの異文化間コミュニケーションやオンラインゲーム、職場におけるデジタルリテラシー等についても紹介しています。

(なお、第2版が2021年7月に出版される予定です)

デジタルリテラシーズとは

デジタルリテラシーというと、コンピューターやインターネットの情報等に関する知識やそれを活用する能力を指すことが多いと思います。

ただ、Rodney and Hafner (2012)は、リテラシーは人々の頭の中の認知的プロセスだけではなく、対人的・社会的プロセスであると言います。

 

「リテラシー」というと、読み書き能力を意味することが多いですが、一口に「読む」「書く」といっても、大学のレポートを書くのと、SNSに投稿するのは全然違います。

Rodney and Hafner (2012, p. 12)によると、大学のレポートとSNSの投稿の違いは内容だけではありません。

大学のレポートとSNSの投稿では、書き手である自分が、読み手と構築しようとしている関係性も違いますし、自分が示そうとする社会的アイデンティティも違います。

また、読んだり書いたりしているときには、辞書を調べたり、ネット等で情報を探したりという別の活動もしています。また、文字情報だけでなく写真やレイアウトなどを解釈しています。

 

つまり、上記の繰り返しになりますが、リテラシーは認知プロセスではなく、対人的・社会的プロセスであるということです。

Rodney and Hafner (2012)は、デジタルリテラシーズ(digital literacies)と複数形で使ったうえで、これは様々な状況で社会的関係や自らの社会アイデンティティを管理することといっています(p. 13)。(ちなみに、リテラシーをリテラシーズと複数形で使うことについて詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。)

 

また、以下のように定義しています(p. 12)。

For us, ‘digital literacies’ refers to the practices of communicating, relating, thinking and ‘being’ associated with digital media.
我々にとって「デジタル・リテラシーズ」とは、デジタルメディアとコミュニケーションをし、付き合い、考え、関係性を持っているという実践のことである。

デジタルメディアを「使いこなす」や「活用する」という言い方ではなく、「コミュニケーション(communicating)」「付き合う(relating (with))」などの用語を使っているのが特徴的ですね。

また、「デジタル」リテラシーと従来のリテラシーの違いとして、SNS等のように話し言葉・書き言葉の境目や、時間・場所の境界、メディアの生産者と消費者の境界も変わっていると指摘していました(p. 13)

 

まとめ

Rodney and Hafnerでは、デジタルリテラシーズの社会的側面に着目しているようですね。

また、テクノロジーがすべてを決めるという考えには気をつけなければいけないとも言っています(p. 13)。デジタルツールを使ってできること・できないことを理解するのは大切ですが、それだけでなく、ツールを使って社会的な活動を行うことを重要視しています。

 

  • Jones, Rodney H., and Christoph A. Hafner. Understanding digital literacies: A practical introduction. Routledge, 2012.