英語教育における言語・文化に関するKramsch & Zhu (2016)の論文を読みました。

英語教育における言語・文化に関する以下の論文を読みました。

  • Kramsch, Claire. and Zhu, Hua (2016) Language and Culture in ELT. In: Hall, G. (ed.) Routledge Handbook of English Language Teaching. Routledge Handbooks in Applied Linguistics. London, UK: Routledge, pp. 38-50.
英語教育における文化

この論文では、英語教育における言語と「文化」というと以下のような観点がよくみられると言っていました(p. 39)

  • アングロ・サクソン文化(「英国」「米国」などの文化)
  • 多国籍な現代文化(ハリウッドなどのポップカルチャー、「アメリカン・ドリーム」に代表されるような現代的な生活)
  • ビジネスでコミュニケーションするときなどに使うグローバル文化における英語
  • シンガポールの英語など、ハイブリッドな形の英語
異文化間コミュニケーション

著者の一人のZhuは異文化間コミュニケーションの専門家だからということもあるかと思いますが、異文化間コミュニケーションについても触れていました。

異文化間コミュニケーションは1950年代に第二次世界大戦後に研究が始まったようで、当初は先住民などの「文化」グループとのコミュニケーションなどを扱っていたようです。1970年代、1980年代になると人種間・民族間のコミュニケーションなど扱うトピックの幅が広がりました。

1990年代になると、もっぱら国民性の比較などに焦点があてられるようになったといっています。

2000年代はこういった本質主義的な考え方に批判が起こり、アイデンティティやディスコースなどに焦点を当てた研究も出てきているようです。

文化に対する考え方

こういった流れのうち、特に、ディスコースに注目した視点は、英語教育における文化の教授法にも関連があるとこの論文ではいっていました。

これは私自身の例ですが、「日本人は礼儀正しい」という例で考えてみます。本質主義的な見方だと「日本人」に備わった特徴として「礼儀正しい」というものがある、と考えます。逆に、ディスコースに着目した文化の捉え方だと、文化は所与のものではなくて、話したり書いたりする中で作り出されていくものと考えられます。つまり、「日本人は礼儀正しい」の場合だと、実際に日本人が礼儀正しいのか否かではなく、「日本人は礼儀正しい」といっているのは誰なのか、いつ、何のためにそういったのかなどという言説に焦点があてられるということかなと思います。

またディスコースといっても1つではなくて、複数のディスコースがあるとも指摘していました。「日本人とは・・・」と言った場合、「礼儀正しい」だけでなくて、「丁寧」とか「四季をめでる心がある」とか、逆に「日本人は無礼だ」など、様々な言説があるということかなと思います。

さらに、文化は動詞だ(つまり「文化」は構築していくものという意味だと思います)という学者もいるようですが(Street (1993:25) )、異文化間コミュニケーションというのは、様々なイデオロギー・記憶・経験を持った人たちが行う社会的行為(social (inter-) action)だとも言っていました(p.42)。

こういった視点で文化をとらえた教授法が求められているともいっていました。

 

文化に関する議論

いくつか最近の文化に関する議論を上げていましたが、一つおもしろかったのが、「culture as both structure and agency」というものです。

最近、文化とは、新たなアイデンティティを作り出す言説的プロセスと理解すべきだという考え方もあるようです。個々人が、言語を使うことでアイデンティティを作り上げていくということと似ているのかと思います(詳しくはこちら)。といっても、個人がなりたい文化を作れるわけではなく(どんな文化でも作れるのではなく)、個人のできることには限界がありますし、社会構造(structure)と個人の主体性(agency)のどちらもが関わってくる問題だとも指摘していました。

 



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