日本の授受表現の方言文法:日高水穂(2006)「(孫に本を)やった、(犬に餌を)やった(か)」

 (孫に本を)やった, (犬に餌を)やった(か).

雑誌「言語」に掲載されていた以下の短い論文を読んでみました。

  • 日高水穂(2006)「 (孫に本を)やった, (犬に餌を)やった(か). 」『言語』大修館書店 2006年12月号(Vol 35. No. 12)p. 68-71 

 

日本の授受動詞

日本語の授受動詞の体系は特殊といわれており、学習者も混乱する項目の一つです。というのも「give」をいうのに2つの言い方があるからです。

  • 私は子供におこずかいをやる(I give pocket money to my kids)
  • 母は私に本をくれる。(My mum gives a book to me)

(相手との関係性によって「やる」以外に「あげる」「さしあげる」、「くれる」以外に「くださる」もありますが、これらの語彙はそれぞれ「やる」「くれる」にまとめるものとします)

同じ「give」でも、話し手から他者への授与は「やる」、他者から話し手(または話し手にとって「ウチ」である人)には「くれる」を使います。

ちなみに日本語のクラスでは「give to me or my family」のときは「くれる」、それ以外のときは「やる/あげる」を使うと簡単に説明しています。

 

方言文法

ただ、今回読んだ日高の論文によると、こういった対立がなく、どちらも「くれる」で使う方言も多数存在するようです。今回読んだ論文の「方言文法全国地図」を見ると、東北や北陸・関東の一部、九州南部は「くれる」を使い、対立がない地域も多いようでした。

歴史的にたどると、昔はどちらも「くれる」だったそうですが、中世期以降、中央語で「くれる」が他者から話し手に向かう授受に制限されるようになったそうです(p. 68)。柳田国男は方言は周圏分布をする(中央部から変化していき、周縁部には古い表現が残る)といっていますが、「くれる」「やる」についてはそれが当てはまるのかもしれません。

この論文では表題のとおり、「犬に餌をやったか」と、人ではなく動物を受け手にした場合の地域差についても調べていました。

 

その他の本

他にもこんな本があるようです。機会があれば読んでみたいです。

  • 日高水穂 (2007)『授与動詞の対照方言学的研究』. ひつじ書房.

 

  • 佐々木冠・渋谷勝己・工藤真由美・井上優・日高水穂 (2006) 『シリーズ方言学2:方言の文法』, 岩波書店



1 Trackback / Pingback

  1. モダリティ、ムード、ヴォイス、アスペクト、テンスの用語についてのまとめ – 旅する応用言語学

Leave a Reply

Your email address will not be published.


*