SLA(第二言語習得)の歴史的変遷④:1980年代の発展(インプット仮説・インタラクション仮説・アウトプット仮説)

SLAとは

SLAとはSecond Language Acquisition(第二言語習得)の略です。1960年頃から活発に研究されるようになった分野です。

このSLAの歴史的変遷について、以下の4つの時代に分けて説明します。

(記事自体は計8記事で記載します。各番号をクリックすると、該当する記事にアクセスできます)

  1. 1960年代・1970年代~:黎明期(
  2. 1980年代~:SLA研究の発展(
  3. 1990年代~:社会的アプローチ・認知的アプローチ(
  4. 2000年代~:多様化の時代(

今回は1980年代の発展期についてです。

この時代はSLA研究が発展しますが、主な研究としては以下のようなものがあります。

前回・前々回の記事では「普遍文法」「語用論」関連の研究について簡単に紹介しましたが、今回の記事では「言語環境関連の研究」について紹介します。

 

インプット・インタラクション関連の研究における3つの仮説

第二言語習得において、学習者に内在する能力だけでなく、学習者の周りの言語環境(特にインプットの重要性)についても研究されるようになります。

これら一連の研究において影響力の強い仮説は以下の3つです。

  • インプット仮説(input hypothesis)
  • インタラクション仮説(interaction hypothesis)
  • アウトプット仮説(output hypothesis)

この3つについて以下で簡単に説明します。

 

インプット仮説

インプット仮説は、Stephen Krashen(クラッシェン)が唱えたものです。

第二言語学習理論と教授法③:クラッシェンの5つの仮説

クラッシェンのインプット仮説は、インプットの重要性を述べており、特に習得が起こるためには理解可能なインプット(comprehensible input)が必要というインプット仮説を唱えました。

クラッシェンは、現段階で理解できるものを「i」と仮定し、それからわずかに高いレベル、つまり「i +1」のインプットを与えることで習得につながると考えました。

  • Krashen, Stephen D. The input hypothesis: Issues and implications. Addison-Wesley Longman Ltd, 1985.

 

インタラクション仮説

クラッシェンは、「インプット」に重きを置いており、あまりアウトプット(産出面)には着目していませんでした。

ただ、インプットだけではなく、相手とやり取り(インタラクション)することで、より習得につながると考えたのがMichael Long(ロング)です。

ロングの仮説は、インタラクション仮説といわれています。

  • Long, Michael (1996). “The role of the linguistic environment in second language acquisition”. In Ritchie, William; Bhatia, Tej (eds.). Handbook of second language acquisition. San Diego: Academic Press. pp. 413–468. 

 

特にロングは「negotiation of meaning(意味の交渉)」の必要性を述べています。

これはどういうことかというと、相手とやり取りする中で、相手に確認したり、自分が理解していることを相手に示したり、言い直したり、ゆっくり話すなどして、相手の伝えたいことを明確に理解しようと努力することです。

こういうプロセスを経ることで、さらに言語学習が促進されると考えました。

 

アウトプット仮説

アウトプット仮説を提唱したのはMerrill Swain(スウェイン)です。

スウェインは、インプットは重要だがそれだけでは十分でなく、アウトプット(産出)する必要があるといいました。

  • Swain, Merrill. “Three functions of output in second language learning.” Principles and practice in applied linguistics: Studies in honor of HG Widdowson (1995): 125-144.

スウェインは、アウトプットをすることにより、自分のやりたいこととできることとのギャップに気づいたり、自分のいいたいことが伝わるかを検証したり、言語に関する知識について振り返ったりできると述べています。

これがアウトプット仮説と呼ばれています。

 

まとめ

1980年頃に研究されていたテーマのうち、言語環境関連の研究について紹介しました。

特にその中でもインプット仮説・インタラクション仮説・アウトプット仮説について紹介しました。

次の記事では言語転移関係の研究について紹介しようと思います。



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