SLA(第二言語習得)の歴史的変遷⑧:2000年代以降の多様化(Multilingual TurnやComplexity Theoryなど)

SLAとは

SLAとはSecond Language Acquisition(第二言語習得)の略です。1960年頃から活発に研究されるようになった分野です。

このSLAの歴史的変遷について、以下の4つの時代に分けて説明します。

(記事自体は計8記事で記載します。各番号をクリックすると、該当する記事にアクセスできます)

  1. 1960年代・1970年代~:黎明期(
  2. 1980年代~:SLA研究の発展(
  3. 1990年代~:社会的アプローチ・認知的アプローチ(
  4. 2000年代~:多様化の時代(

最終回のこの記事は2000年代以降の流れについてです。

 

Multilingual/Plurilingual Turn

1990年代以降は社会的アプローチが盛んになり、その流れの中で、言語を学ぶ者を「学習者」として捉え、ネイティブスピーカーと比較するのではなく、多言語・複数言語を使用し、多文化・複文化アイデンティティを形成する「言語使用者」という視点が出てきます。

 

2000年代以降は、「言語習得」という狭い視点で見るだけでなく、以前紹介したOrtegaの論文にあるとおり、「後期に習得するバイリンガリズム/マルチリンガリズム(late bi/multilingualism)」の研究として捉えるべきという見方が広がります。

 

multilingual/plural turn」と呼ばれるような流れが起きますが、それについてはKubota (2014)の論文のように、批判的に見る動きもあります。

 

  • May, Stephen, ed. The multilingual turn: Implications for SLA, TESOL, and bilingual education. Routledge, 2013.

 

Complexity theoryやecological(生態学的)な視点

SLA(やその他の学問も?)では、現実世界の多様性を単純化し、取捨選択して一般理論を導き出すという傾向が強いです。

ただ、2000年代以降は、従来のSLAの枠組みではなかなかとらえきれなかった言語使用の複雑性等にも目が向けられるようになります。

Complexity theoryやecological(生態学的)な視点を持つことの必要性などが提唱されています。これについて興味のある方は以下の記事をご覧ください。

ただ、こういった一連の流れについては、SLAの目的の一つが言語学習の促進にあるのであれば、複雑性を理解することがどこまでその目的に資するのかという批判もあります。

 

まとめ

SLAの流れについてざっとですが概観しました。

第1回目の記事に述べた通り、第二言語習得と一言にいっても様々な研究がなされているため、このようにざっくりまとめてしまうことに問題もありますが、少しでもお役に立てればうれしいです。




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