Austinとは?
Austinについてや、スピーチアクト理論のできた背景については以下の記事をご覧ください。
スピーチアクト理論
Austinは、発話は、以下の3つの行為を遂行していると考えました。
- 発話行為(locutionary act)
- 発話内行為(illocutionary act)
- 発話媒介行為(perlocutionary act)
今日は一つ一つを(私の理解した範囲で)見ていこうと思います。
参考にしたのは、以下の本です。
- Austin, John Langshaw. How to do things with words. Oxford university press, 1962.
これの第8章・第9章を参照しています。
発話行為(locutionary act)
発話行為とは、要するに文の「意味」とだいたい同じだと言っています(p. 108)。要するに何か意味のある文を言う行為になります。
- 彼は私に「彼女を撃て」といった。(p. 101)
基本は「発話行為」は何か意味のある文を発話することになります。
発話内行為(illocutionary act)
発話内行為とは、何かを言いながら遂行される行為のことです。
発話をすること自体が依頼・命令・約束・警告・感謝・謝罪などの行為を行っていることになります。
- 彼は私に「彼女を撃て」と命令した/忠告した。(p. 101)
例えば、上記の文は、発話することで「命令する」「忠告する」という行為が遂行されています。
- 掃除しなさい
- これを見てくれませんか
- 絶対にここには入らないでください
また上記の3文も、発話すること自体が、命令・依頼・警告といった行為にもなっています。
なお、「命令する」「忠告する」などの動詞は遂行動詞といい、遂行動詞が含まれる発話は明示的遂行発話(explicit performative utterance)と呼んでいます。
一方、上記の3文のように遂行動詞が含まれていないものは原初的遂行発話(primary performative utterance)と呼び、区別しています。
発話媒介行為(perlocutionary act)
これは何かを言うことにより成し遂げられる行為を指します。
- 彼は私に彼女を撃つように説得した。
このように、「説得する」、「感動させる」、「怒らせる」、「驚かせる」など、発話することによって、相手に及ぼされる効果のことを指します。
- 寒いね
- お前なんて大嫌いだ
例えば「寒いね」といったときに、相手が窓を閉めたりすると、この「窓を閉める」という行為は、「寒いね」といった結果として引き起こされることなので、この「窓を閉める」という行為は発話媒介行為となります。
また「お前なんて大嫌いだ」といったことにより、相手が泣き出したりすると、この「泣き出す」という行為も、発話の結果により引きおこされたことなので、発話媒介行為となります。
発話内行為と発話媒介行為の違い
発話内行為は、発話をしながら行為が遂行されることを指します。つまり「約束します」ということ自体が「約束する」という行為を遂行しています。
これに対し、発話媒介行為は、何かを言ったことの結果として、引き起こされる行為を指します。
また、Austinは発話内行為は慣習的なものだが、発話媒介行為はそうではないといっています。(p. 103)
私の理解した範囲だと、「私はあなたと結婚すると約束する」というときの「約束する」が効果を生じるためには、その発話をしかるべき人に対して、しかるべき場所・タイミングで言わなければなりません。これはのちにSearlesが発展させたfelicity conditionsとも関係していますが、発話は適切な条件の下でなされなければ、その効力を生じません。
これに対し、発話媒介行為は、発話の副産物として生じた行為のことで、発話した人が時に意図していなかったような効果を生み出すこともあるといっています。例えば、「おまえが嫌い」と発話したことにより、ある人を怒らせた場合、「怒らせる」という行為は発話媒介行為と言えます。ただ、この「怒らせる」という行為が慣習的に必ず起こるものではなく、人によっては泣き出したり、驚いたりと様々な行為の可能性が考えられます。
まとめ
この記事では、発話行為(locutionary act) 、発話内行為(illocutionary act) 、発話媒介行為(perlocutionary act)について説明しました。
Austinは、このうちの発話内行為を構成する遂行動詞として、5つの類型をあげています。もし興味のある方は以下の記事をご覧ください。