外国語で感情をコミュニケーションする:Jean-Marc Dewaele(2021)の講演

外国語で感情をコミュニケーションする

ロンドン大学バークベックカレッジのJean-Marc Dewaeleの講演を視聴しました。

 

  • Jean-Marc Dewaele “Communicating emotions in a foreign language: the ultimate linguistic challenge” UW Live Stream. 2021年3月31日. (アクセス日:2021年5月27日)

 

外国語で感情やののしりことば(swear words)をコミュニケーションすることについて、自身の経験や研究の成果を紹介しながら説明しました。

 

備忘録

母語と比べると、第二言語・第三言語・第四言語は、感情的にはなりにくい傾向はあるようですね(勿論個人差はあるようですが)。

個人的な経験ですが、日本語母語話者の知り合いが「英語で怒られても、全然怒られている気がしない。心に響かない」と言っていたのを思い出しました。

 

この動画で例として挙げられていたDewaele et al (2021)の研究では、テレビでニュースや映画を英語で見ているときに頻繁に感情的になるか、おもしろい映画をみているときに頻繁に笑うかなどを、イギリス人271人、ギリシャ人282人、ハンガリー人271人を対象にアンケート調査したそうです。

結果としては、英語母語言語話者(イギリス人)と比較して、英語非母語話者(ギリシャ人・ハンガリー人)は、英語でテレビを見ているときの感情的な反応が薄かったようです。

ただ、同じ非母語話者グループでも、ギリシャ人とハンガリー人を比べると、ギリシャ人のほうが感情的になる割合が高かったみたいですね。

 

また、このように第一言語が感情と結びつきやすい理由として、子どもの第一言語習得は情動記憶が大きくかかわっているからなのではと述べていました。

逆に、第二言語のように、成長してから学んだ言語は、教科書を使った学習・知識という宣言的記憶が中心となるため、そこまで感情が関わらないと考えられます。

(繰り返しですが、勿論個人差があり、第二言語のほうが感情的になるという人もいるようですが)

 

参考文献としてあげられていた本

この講演で紹介されていた参考文献も記録しておきます。

  • Pavlenko, Aneta. Emotions and multilingualism. Cambridge University Press, 2007.

↑これについては以前、記事にしていました。もし興味のある方はこちらの記事もご覧ください。

この本で印象に残っているのが、心理セラピーでは、第一言語で話すと、感情的になりすぎるため、第二言語で行うこともあるということです。

今回のDewaeleの講演とも共通している点だと思いました。

 

  • Dewaele, J. Emotions in multiple languages. Springer, 2010.

今回の講演者のJean-Marc Dewaeleの本です。この本の表紙の人物はDewaeleの父親だそうです。

 

  • Resnik, Pia. Multilinguals’ verbalisation and perception of emotions. Multilingual Matters, 2018.