外国語教育・日本語教育・第二言語習得の研究手法を学ぶために便利な参考書(日本語・英語)

質的研究にせよ、量的研究にせよ、その組み合わせにせよ、研究をするにあたって避けられないのが研究手法です。
独りよがりの研究にならないためにも、どのような研究手法にのっとってデータを収集、分析したのかを論文で明示する必要があります。
この記事では、外国語教育・日本語教育・第二言語習得の分野の研究手法を学ぶために便利な参考書を紹介します。
なお、この記事では、言語教育等に特化した参考書に絞って紹介しますが、一般的な(又は他分野の)研究手法の本も参考になるところは多いと思います。

研究手法の全体像を知りたい場合

Second language research: Methodology and design (Routledge)

まず、研究手法の全体像をつかみたければ、以下の本がおすすめです。
  • Mackey, Alison, and Susan M. Gass. Second language research: Methodology and design. Third edition. Routledge, 2021.

第二言語習得の研究手法の本で、ロングセラーの本です。2022年現在、最新のものは第3版です。

量的研究や質的研究、実践研究の手法の説明のみならず、研究の心得や倫理的問題、論文の書き方、研究のコード化の方法、妥当性・信頼性の問題など、幅広いトピックを扱っています。

手元にあると便利な一冊です。

 

Research Methods in Applied Linguistics: Quantitative, Qualitative, and Mixed Methodologies

  • Zoltán Dörnyei (2007). Research Methods in Applied Linguistics: Quantitative, Qualitative, and Mixed Methodologies. Oxford University Press.

この本もわかりやすく研究手法をまとめています。全5部構成で、各研究手法や研究倫理について概観した後(第1部)、データ収集(第2部)、データ分析方法(第3部)、結果報告(第4部)、研究手法の選び方(第5部)について説明しています。

データ収集・データ分析では、量的研究、質的研究、量的・質的を組み合わせた研究の手法について、それぞれ説明しています。

なお、著者のZoltán Dörnyeiはモチベーション研究などの第一人者でもありますが、2022年6月に他界されました。ご冥福をお祈りします。

 

外国語教育研究ハンドブック―研究手法のより良い理解のために

日本語だと、以下の本がおすすめです。
  • 竹内理・水本 篤(2014)外国語教育研究ハンドブック―研究手法のより良い理解のために  松柏社

研究の心得から、量的・質的研究でよく使われる手法、論文作成まで、全23章で記載しています。

各研究手法がわかりやすく、コンパクトにまとめられていて、とても読みやすいです。

全23章のうち、量的研究が1章~16章、質的研究が17章~21章、論文作成が22章・23章なので、量的研究に重きが置かれている印象です。

各章の最後に、おすすめの文献も紹介されています。自分の気になった研究手法があれば、その文献に当たって、より詳しく調べることもできます。

 

 

量的研究の手法について主に学びたい場合

A guide to doing statistics in second language research using SPSS and R

量的研究の手法について主に学びたい場合は、以下の本がおすすめです。

 

  • Larson-Hall, Jenifer. A guide to doing statistics in second language research using SPSS and R. Routledge, 2015.

統計ソフトのSPSSやRの使い方や、量的研究の基礎的な概念、主な分析手法を学べます。

本に出てくる研究の例が、第二言語研究のものなので、理解がしやすく、わかりやすいです。

 

Rによる教育データ分析入門

  • 小林 雄一郎他(2020) Rによる教育データ分析入門. オーム社

統計ソフトウェアRを使って、量的研究の主な分析手法を学べます。

この本のいいところは、テストやアンケートの結果、学生の成績などを、教員であればだれでも保有しているデータを使いながら学べることです。

今まで蓄積したデータを、t検定や分散分析、回帰分析等、様々な分析方法でどう分析できるのか、それによって何がわかるのを知ることができるで、学びも深めやすいと思います。

 

日本語教育のためのはじめての統計分析

  • 島田めぐみ・野口裕之 (2017) 日本語教育のためのはじめての統計分析.ひつじ書房

全168ページと短いので、基礎的なことをざっと知りたいという人におすすめです。この本で基礎的なものを学んでから、他の詳しい本にいくのがいいのではと思います。

統計ソフトSPSSの使い方も簡単にですが説明されています。

 

なお、同じ著者が、2021年に「統計で転ばぬ先の杖 (ひつじ書房)」も出版しています。ひつじ書房のウェブマガジンを大幅加筆修正したものです。

統計手法を用いる時に気をつけるべきことを、日本語教育分野の例をもとに書いていて、参考になります。

 

質的研究手法について主に学びたい場合

Qualitative research in applied linguistics

質的研究の手法について学びたい方は以下の本がおすすめです。

  • Heigham, Juanita, and Robert Croker, eds. Qualitative research in applied linguistics: A practical introduction. Springer, 2009.

 

英語圏の応用言語学でよく使われる質的手法である、narrative inquiry、エスノグラフィー、ケーススタディ、アクションリサーチ等についてわかりやすく説明しています。

また、データ収集方法やデータ収集時の注意点についても説明していて、質的研究を行う際の心得についても学べます。

 

 

日本語教育のための質的研究 入門

  • 舘岡洋子(編)(2015)日本語教育のための質的研究 入門. ココ出版

この本は、日本語教育で質的研究をしてきた執筆者19名が、自らの研究プロセスを内省したものです。

質的研究の手法を学ぶという意味では直接は役に立たないかもしれません。

ただ、なぜ日本語教育でなぜ質的研究が行われるようになったのかという背景を知ることができますし、実際に質的研究を行った執筆者たちが直面した課題などを取り扱っているので、研究をするにあたって参考になると思います。

 

まとめ

量的研究・質的研究の研究手法に関する参考本についてご紹介しました。何かのお役に立てれば幸いです。

随時更新していければと思います。

 

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