ピアジェ(Piaget)とヴィゴツキー(Vygotsky)の違いについて調べてみました。

ピアジェとヴィゴツキーの共通点と違い

ピアジェ(Jean Piaget)は1900年代に活躍したスイスの心理学者で、ヴィゴツキー(Lev Vygotsky)は1920年代~30年代に活躍した旧ソビエト連邦の心理学者です

 

2人はどちらも学習理論に大きな影響を与えた学者で、よく比較の対象にもなります。

 

2人の共通点

この2人の共通点と違いについては、以下のことがよく言われているようです。

2人の共通点
  • 子どもなど個人の発達に関心を持っている
  • 子どもたちは能動的に学習しており、主体的な役割を果たすと考えている

 

学習理論の中には、反復することで学ぶという行動主義の考え方など、あまり子どもたち(学習者)の主体性に重きをおいていない理論もあります。

これに対し、ピアジェもヴィゴツキーも、子どもたちの主体性に重きを置いていることが特徴です。

子ども自身がただ相手の言ったことを受容するだけでなく、能動的に学習にかかわっているという考えです。

 

また、どう子どもが発達していくかという発達段階に興味をもっているということも共通点としてあげられます。

 

2人の相違点

この2人の違いについては、以下のことがよく言われます。

 

2人の相違点
  • ピアジェは構成主義の立場で、個々人の頭の中の認知的発達に着目している。
  • ヴィゴツキーは社会構成主義の立場で、社会的な交流を通しての発達に着目している。

 

ざっくり言ってしまうと、個人の頭の中の認知的発達に注目しているか、社会的な交流(大人などとの会話など)を通しての発達に注目しているかというところが大きな違いのようですが、以下もう少し説明します。

 

ちなみに、ピアジェ自身も、社会的な交流の大切さを無視しているわけではありません。

ただ、ピアジェにとって交流はあくまで認知的な発達を促す重要な要素であり、それが発達の直接的な要因とは考えていないというところに違いがあります。

 

ピアジェ

ピアジェ(Piaget)の考え方は以下のようなものがあります。

認知発達の概念

まず、子どもたちは、育った環境から自ら知識を構築していく力があるといっています。

また、その認知的発達の概念として、「シェマ(schema)」「同化(assimilation)」「調節(accommodation)」「均衡化(equilibration)」という4つの概念を提示しています。

 

シェマというのは、今までもっている知識の枠組みのようなものですが、それを応用することを「同化」といいます。

例えば、すでに運転免許を持っている人が新しい車で運転するとします。新しい車はエコ運転モードなど様々な新機能が搭載されていますが、たぶん既存の知識を使って運転できるでしょう。それは既存の知識(シェマ)を使って、新たな経験を「同化」したと考えられます。

 

ただ、同じ車といっても、オートマ車からマニュアル車に変えたとします。オートマ車しか運転したことのない人だったら、ギアチェンジなど新たに学ばなければならず、今まで持っていた「運転」という枠組みに大きな修正が起きると考えられます。それを「調節」といいます。

このように「同化」と「調節」をしながら、「シェマ」を構成していくことを「均衡化」といっています。

 

認知発達段階

また、ピアジェは認知発達には以下のような4つの段階があると考えました。

 

  1. 感覚運動期(sensorimotor stage)(0~2歳):言語を習得するまでの期間。感覚と運動でモノを認識
  2. 前操作期(pre-operational stage)(2~7歳):言語を取得する時期。ただ、自己中心性があり相手の立場で想像できない。
  3. 具体的操作期(concrete operational stage)(7~11歳):論理的思考を学びはじめる。数・量などの概念もわかる
  4. 形式的操作期(formal operational stage)(11歳〜):抽象的思考を学び始める。他者の視点に立てる

 

 

ピアジェの立場は構成主義(constructivism)といわれます。自分の中で意味を構成していくことを重視した考え方です。

 

ヴィゴツキー

ヴィゴツキーの考え方には以下のようなものがあります。

言語と思考

ヴィゴツキーは言語学習と思考の発達は密接な関係があると考えています。

言語というのは思考を媒介するものであり、この言語学習なくして、思考は発達できないと考えます。

 

また、この言語・思考を発達させるための、社会的な交流を重視しています。

子どもは大人や年長者とフォーマル・インフォーマルな場面で会話をすることにより発達していくと考えています。

 

発達の最近接領域(zone of proximal development (ZPD))

ヴィゴツキーはzone of proximal development (ZPD)という概念を提唱しています。

これは「発達の最近接領域」とも訳されるようですが、子どもや学習者が、大人や教師等の手を借りて発達できる伸び幅みたいなものです。

例えば私が太極拳を習い始めたとします。

自分でもある程度は学べるかもしれませんが、上手な人の助けを借りると自分一人でやるよりもっと上手になるかもしれません。

ただ、「助け」であればなんでもいいというわけではなくて、上手な人に超上級の業を教えられても、初心者の自分にはできるわけがありません。

初心者でも学べるような範囲の「助け」が必要になります。この自分一人でできる幅と、上手な人に手伝ってもらって到達できる間のことをZPDと言っています。

このZPDに向けた教育をすることが大切とヴィゴツキーは言っています。

 

ピアジェが頭の中の認知発達に興味を持っていたのに対し、ヴィゴツキーは社会的相互作用を通した個人の発達に着目しています。

ヴィゴツキーの立場はよく社会構成主義(social constructivism)言われます。

 

ご興味のある方は

ヴィゴツキーは応用言語学の社会文化理論や、言語社会化(language socialization)などにも影響を与えています。もしご興味があれば、以下の記事もご覧ください。

ただ、今回の記事と重複するところもありますし、備忘録なので、読みづらい箇所も多いと思います。申し訳ありません。

 

まとめ

ピアジェやヴィゴツキーの共通点と違いについて説明しました。

ピアジェ・ヴィゴツキーの理論に興味のある方は、日本語でもいろいろ文献が出ています。

  • 市川功(2002). ピアジェ思想入門―発生的知の開拓. 晃洋書房
  • 柴田義松(2006)『ヴィゴツキー入門』寺子屋新書