日本語の副詞の分類(情態副詞・程度副詞・陳述副詞)について

日本語の副詞

日本語の副詞は情態副詞・程度副詞・陳述副詞の3つに分類されることが多いです。

この副詞の分け方の基礎を作ったのは、日本語研究の祖でもある国学者の山田孝雄(よしお)です。

 

この3つはざっくりいうと以下のように違います。

  • 情態副詞:動作の様子を表す。状態副詞・様態副詞ともいわれる。
  • 程度動詞:程度を表す。
  • 陳述副詞:文の後に続く表現と呼応する副詞のことで、話し手の心的態度を表す。誘導副詞・文副詞・呼応副詞ともいわれる。

 

なお、呼び名にばらつきがある要因の一つとして、山田の提唱した名称が後に批判・修正を受けたことがあげられます。

また、文脈によってカテゴリーが変わったり、一つ以上のカテゴリーに当てはまりそうな副詞も多いため、上記の3つにきれいに分けられるわけではありません。

以下でそのそれぞれを例を出しながら見ていきます。

情態副詞

情態副詞とは、どのようにその動作を行っているか、その動作の様子を表すものです。動詞を修飾することが多いです。

状態副詞・様態副詞と言われることもあります。

 

例えば、「ゆっくり話す」という文では、「ゆっくり」は「話す」という動作がどのように行われるかを説明しています。

情態副詞の例としては、以下のようなものがあります。

  • ゆっくり話す
  • ドアをどんどん叩く
  • この道をまっすぐ行く
  • しばらくお待ちください。
  • 財布をうっかり忘れてしまった。

 

「どんどん」「わんわん」などの擬声語、擬態語も情態副詞に入れられます。

なお、日本語の擬音語・擬声語・擬態語については多数研究もされているので、ご興味のある方は以下の記事もご覧ください。

 

程度副詞

程度副詞は、その状況が「どのくらいだったか」という、程度を表す副詞です。形容詞などの状態性の述語を修飾することが多いです。

 

例えば、「今日はちょっと暑かった」という文では、「ちょっと」は、暑さの程度(どのくらい暑かったか)を説明しています。

 

程度副詞の例としては、以下のようなものがあります。

  • 今日は少し寒かった。
  • あの犬はとても大きい。
  • 明日の試合に買つのは大変難しいと思う。
  • ずっと前から、この日のために努力してきた。
  • このレポートには問題点がかなり多い。

 

程度副詞は、形容詞・動詞だけでなく、名詞や他の副詞を修飾することもあります。

例えば、上記の「ずっと前から、この日のために努力してきた。」という例文では、「前」という名詞を修飾しています。

 

陳述副詞

陳述副詞とは、文の後に続く表現と呼応する副詞のことで、話し手の心的態度を表すものです。

呼応副詞や誘導副詞、文副詞ともいわれます。

 

なお、呼応というのは、ある語が、後ろに特定の語・表現を要求することです。

例えば、「まるで」という副詞の場合、「まるで夢を見ているようだ」「まるで夢を見ているみたいだ」という「ようだ/みたいだ」という表現と、一般的にセットで使われます。

 

陳述副詞には、以下のような例があります。

赤字が陳述副詞で、青色がその呼応している部分です。

  • もし100万円をもらった、海外旅行に行こう。(仮定)
  • たぶん、明日は晴れるだろう。(推量)
  • あの人に会えるなんて、まるで夢のようだ。(たとえ)
  • どうかあの人に一度でいいから会わせてください(願望)
  • どうして宿題をしなかったんです。(疑問)
  • 彼は決して自分の嘘を認めようとしない。(否定)

 

陳述副詞は普通、後に続く表現と呼応するのですが、呼応しないこともあります。

例えば、「たぶん」の場合は、「だろう」が呼応しなくても使えます。

  • たぶん明日は晴れる。

 

陳述副詞について

なお、陳述というのは、伝統的な国語学で、文にまとまりを与える働きをするものという意味で使われます。

(なお、国語学では、近代日本語研究の一人者である山田孝雄(やまだよしお)以降、文を成立させる機能のある陳述というのはいったいなにかという点について、陳述論争が行われていました。)

山田は、この陳述と呼応する副詞を陳述副詞と呼び、他の副詞と区別しました。

なお、この陳述は、現代日本語研究では、話者の心的態度を表すという点ではモダリティと共通するところもありますが、必ずしも一致するというわけではありません。

 

まとめ&興味のある方は

日本語の副詞の種類(情態副詞・程度副詞・陳述副詞)について簡単に紹介しました。

 

山田文法に興味のある方は以下の本などがあります。

 

また、陳述とモダリティについては、以下のMaynardの本の2章で簡単にまとめられています。